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 10年以上前に日本に先駆けて電力を自由化した米国は、現在でも多くの問題を抱えている。自由化の形態は1つに落ち着かず、複数の形態を州ごとに採用している。また、かなりの数の州が全く自由化していない。このことからも分かる通り、地方の事情が大きく左右する。米国のシステムが最良というわけでは決してないが、その自由化の沿革から見えてきた課題をまとめる。日本に電力自由化を適用する場合には参考になるだろう。

インフラのさらなる整備

 米国には、日本のような50ヘルツと60ヘルツによる送電網の亀裂はない。しかし、3つの独立した送電網が存在しており、それぞれの接続はないに等しい。その3つの独立した送電をつなぐプロジェクトが進行中だ。

 東日本大震災で問題が表面化した日本における送電網の亀裂は、電力会社の管轄内という小さな縛りにこだらない日本全体としての電力プール形成の必要性を浮かび上がらせた。米国が進めているような中継地点の建設が必要となるだろう。

 いったん直流に変換するという形式は非常に興味深い。現在、欧州や米国では、高電圧による送電(HVDC)のプロジェクトが計画されており、その送電距離は5000kmとも2万5000kmともいわれている。これだけの距離をロスを最小に抑えて送電できるのであれば、北海道や東北の風力発電による電力でさえ中継地点まで直流のまま接続できる。日照時間の長い九州や沖縄での太陽光や熱による電力も直流で中継地点に接続できる。

 このように日本全体を1つの大きな送電網で接続して、大きな電力プールを形成できる。さらに、HVDCの考えを拡張すれば、近隣の国々、韓国、台湾、中国、ロシアなどとも送電網の接続が可能となり、相互に電力の融通が可能となる。エネルギーの宝庫であるシベリアで発電して、その電力を日本へ搬送することも可能になる。