現在の日本の電力システムは日本を10の地域に分け、それぞれの地域に「発電」「送電」「配電」「小売り」という要素を一括して提供する1社の電力会社を独占的に配置している。独立系の発電会社を認める電力自由化の動きもあるが、まだ大きな流れにはなっていない。第二次世界大戦中は戦争続行のため、電力会社は全国で1社しかなかったが、1951年にGHQ(連合国軍総司令部)の圧力などによって分割された10社が現在まで続いているのだ。

 このシステムの長所は、同じ会社がすべての要素のオペレーションを行なうため、安定した電力を供給できることだ。短所は、発電でも独占を保ちたいという意向が働くために、独立系発電所からの送電線へのアクセスを拒否したり、不当に高価な接続費を課したりする可能性があることだ。このため、発電の自由な競争が阻まれる。送電線への公平なアクセスが望めないと、再生可能エネルギーを利用した発電所の建設促進を図ることも難しくなる。公平なアクセスが保証されれば、様々な発電所の建設が促進され、競争も促進され、電気代も下がると予測される。

 今回から5回にわたり、電力の自由化について解説する。日本でにわかに盛り上がってきた「発電と送電の分離」という局所的な問題だけでなく、もっと大きな視点で電力の自由化を考えたい。電力自由化が進んでいる米国で起きたことを検証し、それを踏まえた上で、日本の電力自由化に対する提言を述べる。