ここ数年間で、一般的なサーバーの電力あたりの性能は飛躍的に向上している。古いサーバーを継続的に使うよりも、新しいサーバーに置き換えることで、劇的にサーバーの台数を減らすことができる。その分、エネルギー消費も劇的に削減可能だ。

 2005年の一般的な2ソケットのサーバーに対し、現在購入可能な2ソケットサーバーはおよそ15倍の性能がある。インテルの試算では、集約置き換えをすることで、データセンターにおいて95%のエネルギーを削減し、新規投資分の費用を約5カ月で回収できる(図1)。2006年当時のデュアルコアの2ソケットサーバーを置き換える場合でも、性能差は約5倍以上ある。5対1で集約することができ、エネルギー削減率も85%となる。新規サーバーの投資も約15カ月で回収できる計算だ。

図1●サーバー更新のメリット
図1●サーバー更新のメリット
シングルコアプロセッサーのサーバーからインテルXeonプロセッサー5600番台搭載サーバーに更新する場合。インテルによる試算。

 2010年のグリーン・グリッド データセンター・アワードの最優秀賞に輝いた日立製作所の事例でも、データセンターの電力50%削減目標のうち、IT機器の置き換えと、それに伴う設備側の負担低減による効果を合わせて30%と見積もっている。もちろん、すべてのIT機器を一度に置き換えることは難しいし、ITサービスに対する需要も増加している。それでも、少なくとも4~5年に一度のサーバー更新を行っているなら、その更新を少しでも早く行うことが今の状況では求められていると言えるだろう。

仮想化で、サーバーの台数を減らす

 サーバーを集約して置き換える際、アプリケーションの変更を伴うと移行プロジェクトは非常に困難なものとなる。ところが、仮想化技術の進歩により、アプリケーション環境をそのまま仮想環境で支援することで、移行労力を削減できるようになってきた。実際には、仮想化によるサーバーの集約は、新旧サーバーの性能差以上に集約できる可能性が高い。それぞれのサーバーの使用率が、一般にはそれほど高くないという現実があるからだ。

 企業の情報システムは、部門ごとに最適化されてきた歴史がある。アプリケーションごとに専用のハードウエアが用意されてきたため、他の部門や他のアプリケーションとIT資源の共有があまり進んでいない。縦割りになっている背景には、予算管理が部門ごとに個別に管理されていたり、セキュリティポリシーによって混在を認めないなどの事情がある。

 ITシステムの全社的な効率改善には、当然ながら全体最適を考えなければならない。仮想化は、それを実現するための非常に強力な手法である。長期的には、社内クラウド化のような変革を考えなければならないだろう。図らずも、この夏の電力事情の悪化は、社内の様々な効率改善を促す原動力となっている。情報システム部門としては、今まさに、IT基盤の全体最適の戦略を立案すべきである。

 もっとも、そのように大上段に構えなくても、緊急避難的に、部門サーバーや部門別サービスのアプリケーションを載せているサーバーをまず集約してしまう手もある。大企業ほどそのようなサーバーは多く、比較的容易に始められる。

 新規サーバーを購入することが難しい場合でも、既存サーバーによる集約も不可能ではない。ただし、新しいサーバーは仮想化支援技術が実装されており、性能に対する大きな改善が施されているが、古いサーバーではそのような機能が実装されていない。このため、性能の見積もりをきちんと検証する必要がある。

 また、古いサーバーでは集約率をそれほど高められないという懸念もある。仮想化集約するなら、新しいサーバーを活用した方が効果は高い。新規サーバーを使ったサーバー更新と集約を一緒に行うことにより、クラウド時代に必要な基盤機能の強化となる。仮想化のアシストだけでなく、例えば、世代を超えたサーバー間での仮想マシンの動的移動を可能とするような技術が入っているからだ。IT部門としては、積極的に考えるべき項目である。