東日本大震災後の電力供給の制限により、ピーク時の電力削減が最も急務の課題とされる。データセンターでは、エネルギー効率を無視した緊急避難措置として、各社の持つ非常用発電により、ピーク時の供給電力を削減することが即効性のある1つの方法と想定されている。もちろん、信頼性や燃料確保の継続性など、様々な課題はあるため、慎重な検討が必要なのは言うまでもない。

 では、自家発電以外にピーク時の電力削減方法はあるのだろうか。

処理スピードよりもピーク時の電力削減を優先

 IT機器の消費する電力は、データセンターで消費される電力で大きな比率を占める。PUE値が2.0のデータセンターであれば、IT機器の消費している電力はデータセンターの総電力の50%である(PUEについては前回の記事を参照)。IT機器は、一般には使用率が変動している。つまり、高い使用率のタイミングと低い使用率のタイミングが存在する。高い使用率のタイミングが夏場の電力需要のピーク時に重なる場合、その電力を抑え、仕事を少しシフトすることができれば、電力事情への貢献が可能だ。

 まずは、IT機器(特に台数の多いサーバー機器)の電力使用傾向を理解することが必要だ。しかし、個別判断が難しい場合は、サーバーの使用率統計データを見ることで、負荷状況が分かる。多くの企業内データセンターでは、運用管理上、CPU使用率などのデータを取っているだろう。負荷と電力消費は連動するため、おおよその状況を把握できる。

 サーバーの稼働状況が分かったら、電力削減の可能性を検討する。最近のサーバー機器には、電力消費制御に関する機能(パワーキャッピング機能)が備わっているものが多い。ある一定の作業を実行するための仕事量は変わらないので、パワーキャッピングは、基本的にはピークシフトを実行する手段である。サーバーの使用する最大電力を抑えることにより、電力消費を平準化し、処理時間は多少長くかかるが、ピーク時電力消費を抑えることが可能ということだ。

 しかしパワーキャッピング機能は、サーバーの性能と表裏一体なため、多くのIT部門での活用は進んでいない。サーバーでのパワーキャッピングは主にCPUの周波数を低く制御することで実現されているためだ(IT機器の電力制御の活用状況についての詳細は、グリーン・グリッドのホワイトペーパー「#33 A ROADMAP FOR THE ADOPTION OF POWER-RELATED FEATURES IN SERVERS」を参照)。しかし、東日本大震災後は、処理のスピードより、ピーク時の電力の削減が優先される状況があるため、真剣にこのような機能を活用することを推奨する。

 処理の性能については、各アプリケーションの特性により、パワーキャッピングを実行しても影響の少ないケースと大きなケースがある。メールなどインタラクティブ性のあるアプリケーションでは、3~4割のパワーキャッピングを行ってもスループットにほとんど影響が出なかった例がある。

 一方、高度科学技術計算のように常にCPUをフル稼働させるようなアプリケーションでは、電力削減に比例してスループットに影響が出る。顧客とのSLA(Service Level Agreement)に影響が及ぶ可能性があるため、導入前に検証実験を行い、知見を高めることが必要だ。

 サーバーのパワーキャッピング機能を含め、サーバーでの節電については、各サーバーメーカーから情報が提供されている。実際に活用可能か、どのように設定するのか、使った場合の効果がどうなるのかを、実際に利用しているサーバーメーカーのサイトを見て確認してほしい。サーバーの電力制御以外にも、様々な省エネのヒントが記載されている。