経済産業省は6月1日、電気事業法第27条に基づく電力使用制限命令を告示した。東京電力または東北電力と500kW(キロワット)以上の利用契約を結んでいる企業(大口需要家)に対し、今夏の最大使用電力について昨年比15%の削減を求める。電力会社が電源供給能力を増強したため、当初検討された「25%削減」よりも企業の負担は軽くなる。

 経産省は同時に、医療機関や公共インフラの一部施設について電力使用制限の削減率を緩和することを発表した。データセンターも緩和の対象となる。データセンターにIT機器を移設することは、企業にとって有力な節電策。今回の緩和により、センター利用の動きが加速しそうだ。

 東京電力管内の需要家は7月1日から9月22日までの平日9~20時に、電力削減を義務付けられる。東北電力管内では7月1日から9月9日までの平日の同じ時間帯である。

違反には100万円以下の罰金も

 今夏の電力使用制限の値は、契約者ごとに昨年実績から算出する必要がある。昨年同時期の1時間当たりの使用電力のうち、最も高かった時間帯の電力値(基準電力値)から15%削減した値が今夏の上限となる()。

図●東京電力管内の大口需要家が求められる電力使用制限の考え方
図●東京電力管内の大口需要家が求められる電力使用制限の考え方

 2010年7月25日の13~14時に使用した「500kW」が最大使用電力であれば、これを基準電力値とする。この値を15%削減した(0.85を掛けた)「425kW」が今夏の上限となる。対策を怠って上限値を超えてしまうと「故意による使用制限違反」と判断され、100万円以下の罰金が科せられる。

 データセンターについては、通常15%の削減率が0~10%に緩和される。昨夏の使用電力の変動幅が20%未満であることが条件となる。変動幅は、1時間ごとの消費電力が1日のうちでどの程度変動しているかを表す値。その大きさによって削減率が変わる(表1)。

表1●データセンターにおける使用電力の変動幅とそれに応じた削減率
表1●データセンターにおける使用電力の変動幅とそれに応じた削減率

 変動幅が小さいと電力需要がフラットであるため、ピーク削減の余地が小さいと見なされる。変動幅が10%未満のデータセンターは削減率0%で、基準電力値を超えなければよいことになる。