日本企業の成長戦略に欠かせない存在となったアジア市場。現地のICT(情報通信技術)事情を、古くからアジア進出を図ってきたNTTコミュニケーションズのレポートで紹介する。第1回は中国。金融危機の際もITサービス市場は二ケタ成長を維持した。急成長する地元IT企業も増えつつある。

 中国における企業向けITサービス市場は拡大を続けている。

 やや古い数字になるが、中国CCWリサーチの調査によると2009年のITサービス市場規模は1020億8000万元(約1兆3000億円)。2008年は878億6000万元(約1兆1200億円)だったので、前年比16.2%と大幅に成長している(図1)。

図1●中国のITサービス市場規模
図1●中国のITサービス市場規模
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 世界的な金融危機の影響を受けて2007年や2008年に比べると成長率は下落したものの、力強い伸びを続けている。2010年も前年比二ケタの伸びを維持しているものとみられる。日本のITサービス市場が2009年、2010年と2年連続マイナス成長に陥ったのとは対照的だ(IDC Japan調べ)。

 ここで言う企業向けITサービスは、保守、メンテナンスといったサポートサービス、システムインテグレーション(SI)、コンサルティング、アウトソーシング、トレーニングといったプロフェッショナルサービスを指す。

 筆者が所属するNTTコミュニケーションズ(中国)でも、システム構築案件の数は増加している。2009年の顧客数は、対前年比で30%増えた。とりわけ、100万元(約1300万円)を超える大規模案件の増加が著しい。

 以下では、急拡大を続ける中国市場について、企業向けのIT製品やサービスの動向と、中国に進出する企業が留意するべき現地特有のIT事情を説明しよう。