あなたは、時計メーカーに勤めるエンジニアである。今回、新製品に関するテスト計画を立てることになり、テスト観点の抽出と、テストの優先順位付けを任されることになった──。この例題を通じて、テスト計画の山場となる、テスト観点の抽出と、テストを実施する優先順位付けのポイントを学んでほしい。例題は腕時計だが、その本質はシステム開発のテストでも共通する部分がほとんどである。

 さて、今回テストの対象となるのは、年末商戦に向けた「歩数計機能付きの腕時計」である。発売日に間に合うように、必要なテスト計画を立てるのが任務だ。開発は現在、要件が確定し、これから設計が始まる段階である。これと並行してテスト計画を立てる。

腕時計の機能を4週間でテスト

図1●誌上ワークショップにおけるテスト対象
図1●誌上ワークショップにおけるテスト対象
テスト対象は「歩数計機能付きの腕時計」である。あなたは発売日に間に合うように、バグを見つけるためのテスト計画を立てる必要がある
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 要件定義で明らかになった時計の機能は図1の通りである。基本機能は、「時計機能」「歩数計機能」「設定機能」の三つ。最近の健康ブームに乗ってジョギングやマラソンに励むランナーをターゲットとしている。このため健康への意識の高いユーザーにとって重要な部分、あるいは製品として訴求力の高い部分を重点的にテストする。テストの実施期間は4週間だ。

 時計のユーザーインタフェースには、操作ボタン、時刻や歩数を表示する液晶ディスプレー、アラーム音を出すスピーカーがある。具体的なテストは、実機(試作品)を使って行う。

 なおテスト計画の目的は、テスト観点の網羅的な抽出や、テストの実施順序の大まかな把握、テストを実施する際のコストの見積もりなどだ。問題と解答シートは図2である。テスト計画の一部として、テスト観点を列挙し、それぞれ実施する際の優先度を記入する。いくつかの項目には既に観点や優先度を記入したので、残りの空欄を埋めてほしい。テストの網羅性を確保すると同時に、4週間という限られた時間内にテストを終わらせることを守らなければならない(ただし、非機能のテストは含めない)。

図2●テスト計画を立ててみよう
図2●テスト計画を立ててみよう
歩数計機能付きの腕時計のテスト観点と、テストを実施する順序を考えてほしい。問題1と問題2のテスト期間は共に4週間であり、実機を使ってテストする。この問題は、JaSSTソフトウェアテストシンポジウム2010関西で実施したワークショップの内容を基に作成している
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 ここから先は、いったん例題を考えた後に読み進めてほしい。