「パソコン市場はタブレット台頭に伴い勢いが鈍っている」「いや、タブレットはパソコン需要を奪っていない」――。2010年後半からこうした意見が活発に飛び交っている。もちろん背景にあるのは、米アップルの「iPad」「iPad2」や、7~10インチ画面のAndoroid端末の人気ぶりだ。持ち運びを前提とする軽量ノートパソコン、特にネットブックから市場を奪っているという見方が強まっている。

 「ネットブック市場には確かに影響が出ている」とガートナー ジャパンのテクノロジ&サービス・プロバイダー 主席アナリスト、蒔田佳苗氏はいう。そうした意見も参考にしつつ、今後どうなるのか考えてみよう。

2010年6月からiPadの影響を指摘する声

 iPadなどの好調ぶりが、ネットブックの脅威になるのではないかという指摘は2010年の6月には出ていた。米ディスプレーリサーチは、同年4月に登場したiPadが好調なことを受け、「ネットブック時代終焉の始まりになる可能性がある」と分析した。

DisplaySearchのQ1調査、タブレットのシェア拡大を予想

 米フォレスターリサーチも同年6月、2012年にタブレットがネットブックの販売台数を抜くという予測を出している。

米国タブレット型コンピュータ市場、販売台数が年平均42%で成長

 同時期、米国の投資銀行オッペンハイマーのアナリストが、アップルの店舗に並んだ消費者を対象に「今後3カ月以内にほかのアップル製品を購入するか」と聞いたところ、iPadを購入しようとしている人の23%は、「(iPadの購入が)ネットブックなどのほかの消費者向け機器からの買い換えになる、あるいはiPadを購入することでその次の電子機器の購入時期が先になる」と答えたとし、ネットブック需要を奪う可能性を示唆した。

米投資銀行OppenheimeriなどがPhone 4とiPadの影響力を指摘

 さらに同年秋になると複数の調査会社がiPadなどタブレット端末の勢いの良さと、ネットブックへの影響を異口同音に指摘し始めた。

 前述のディスプレーリサーチは同年9月の調査でも「新興市場ではミニノートが1台目のパソコンとして受け入れられるが、パソコン普及率が高い市場ではiPadがミニノートのシェアを奪うようになる」と分析した。

好調のiPadがミニノートのシェアを奪う---DisplaySearchの調査

 米IDCも同年10月に「タブレット端末『iPad』が小型ノートの出荷台数減少の要因になっている。またiPad効果でアップルのパソコン『Mac』が伸びている」との見解を出した。

IDC調査で2010年Q3の世界PC市場は11%成長、Appleが米国市場で3位に

 米ガートナーも同年10月15日、タブレット端末の価格が300ドル以下へと低下するのに伴いネットブックの脅威にもなると予想。同年11月には「タブレットは2014年までに世界のパソコン出荷台数を10%減少させる影響力を持つ」と見解を追加した。

タブレット端末の世界販売台数、4年後には2億台超---Gartner調査

Gartner、世界PC市場予測を下方修正、タブレットの影響受け

 さらに同年11月27日付の米国投資情報誌バロンズで米投資銀行FBRキャピタル・マーケッツのアナリストが「タブレット端末が2.5台売れるごとにパソコンの販売台数が1台減少する」との見解を公表した。

「2011年のタブレット販売台数は最大1億台、PCを脅かす」

2011年もタブレットの勢いに陰りなし

 2011年に入っても、タブレットの勢いを裏付けるリポートが相次いでいる。米アクセンチュアは同年1月4日、消費者向けエレクトロニクス製品の展望に関する国際調査の結果として、「パソコンや携帯電話(スマートフォンを除く)に対する消費者の購入意向率は昨年と比べて減少し、3Dテレビやタブレット型コンピュータの購入意向率が大幅に高まっている」と伝えた。

消費者の購入意向率、PCは減り3DTVやタブレットが急増

 また同年1月、米IDCも米ガートナーも2010年第4四半期のパソコン市場が事前予測を下回ったことを伝え、その理由にタブレット端末の影響を挙げた。

米調査会社2社が2010年Q4のPC市場、消費者需要の軟化を報告

 同年3月、米ガートナーはタブレットの影響が個人市場だけでなく、法人市場でもパソコンの買い替えサイクルに影響を及ぼす可能性にも言及した。

Gartnerが世界PC出荷予測を下方修正、タブレット台頭が要因