ITベンダー社内での会話
ダメな“システム屋”の会話 若手“システム屋” 「次回の会議資料、見ていただけましたか?」
ダメな“システム屋”上司 「見たぞ。ちょっと手を入れないとダメだな」
若手 「はい、どこでしょうか?」
ダメ上司 「この資料は客観的すぎる。我々の報告なんだから、我々がどんな仕事をしたかを報告すべきだ。つまり、全ての主語は我々でないとダメだ」
若手 「しかし市場の全体動向や競合他社の動きについては、客観的に書くべきだと思ったのですが」
ダメ上司 「競合他社の情報なんか最小限でいいんだよ。我々のサービスが良ければ、競合他社なんか関係ないだろ?」
若手 「我々のサービスがいくら優れていても、競合他社が強力なら対策が必要だと考えたのですが・・・」
ダメ上司 「ごちゃごちゃ考えすぎだぞ。それに、背景や経緯の情報が多すぎる。我々がやってきたことと、これからやることを示せば十分だ」
若手 「しかし、経緯を知らない出席者から知恵をお借りするには、その種の理解を促す情報が必要ではありませんか?」
ダメ上司 「そこがそもそも違うんだよ。出席者って他部門のお偉いさんだろ?我々の部門の仕事は特殊なんだから、知恵を借りようとか考えても無駄だ」
若手 「そうですか・・・」
ダメ上司 「あと、このサービス稼働品質に関するデータはちょっと低いな。イメージが悪いから、削除しておけ。下手に突っ込まれたら面倒なことになるからな」
若手 「でも、社長も出席されるんですよね。包み隠さずきちんと報告した方が良いのではないでしょうか」
ダメ上司 「バカかお前は。社長がいるからなおさらなんだよ。報告は無駄なく最小限に、誰からも何も突っ込まれないようにやるべし。これこそがサラリーマンの常識だろう」
若手 「でも、情報を隠すのでは報告をする意味が無いのではないでしょうか?」
ダメ上司 「つべこべ言わず、政治家の国会答弁や記者会見を見てみろよ。あれが理想。見習うべきだよ」
若手 「・・・(うーん。この上司にはついていけないよ)・・・」

ダメな理由:真実を隠し、突っ込みをかわす

 報告は仕事の一部です。どんな仕事にも報告があり、報告相手がいます。会社に勤めているならば上司が報告先ですし、その上司にもさらに上の上司がいます。社長であれば一番上ですから報告相手がいないようにも思えますが、株式会社では株主が社長の雇い主ですから、株主総会などで報告することになります。

 それでは、会話で登場するダメな“システム屋”上司が「理想」だと言う政治家はどうでしょうか。

 政治家にも報告相手がいます。有権者・国民です。税金を支払っている国民が雇い主で、株主総会の代わりに選挙がありますが、選挙活動の最中に報告しているようには思えません。最悪なら名前の連呼しかしません。

 選挙に当選して政治活動に入った政治家は公人であり、その発言は逐一報道されます。発言自体が政治という仕事そのものであると共に、国民への報告の一環でもあるはずです。