金融庁はIFRS(国際会計基準)の強制適用に先駆けて、2010年3月期から条件を満たす企業に対してIFRSの任意適用(早期適用)を認めている。その第1号として注目を集めたのが水晶製品大手の日本電波工業(NDK)だ。他の日本企業よりも早く、10年3月期の連結財務諸表にIFRSを適用した(図1)。

図1●日本電波工業のIFRS対応の経緯
図1●日本電波工業のIFRS対応の経緯
10年3月期に国内企業として初めてIFRSを適用した
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 NDKはこの時点で、IFRS適用に関してはベテランの域に達していた。02年3月期から、海外投資家向けに作成している英文のアニュアルレポートで、IFRSに基づいた監査済みの連結財務諸表を公表していたのである。

 ところがIFRSに基づく財務諸表を作成していたからといって、そのまま任意適用に移れたわけではない。連結決算システムを刷新する必要が生じたのだ。「システムによる自動化などを通じて、連結決算業務をスピードアップすることが必須だった」と財務本部財務部主計課の伊藤洋祐専門課長は説明する。

並行開示が課題に

 これまでと大きく異なるのは、連結財務諸表を作る手間と頻度だ。NDKがIFRSを適用する以前は、日本基準で連結財務諸表を開示し、その後アニュアルレポート向けにIFRSに基づく連結財務諸表を作成する、という流れで進めていた。

 米オラクルの連結会計ソフト「Hyperion」を利用した連結会計システムを利用していたが、主に日本基準での作成用に設定していたのに加え、海外グループ会社からExcelでデータを収集するなど手作業が多かった。決算開示は5月、アニュアルレポートの発行は8月と3カ月の差があったので、それでもこなせる範囲だった。

 IFRSを適用すると、ケタ違いに作成の手間がかかる。特に適用初年度は、並行開示の手間が大きい。比較のためにIFRSと日本基準の両者の財務諸表を作成し、開示しなければならない。

 初年度以降も決算期だけでなく、四半期ごとに決算日後45日以内にIFRSに基づく連結財務諸表を作成する必要がある。作業を自動化しないと、対応はもはや限界だったという。