「IFRS(国際会計基準)対応のためにシステムを構築・改修する期間として、2年間を確保する必要がある。全社プロジェクトの結果を待っていては間に合わないと判断した」。王子ビジネスセンター常務取締役の池永元昭 業務本部長はこう話す。

 王子製紙のシステム子会社である王子ビジネスセンターは2009年に、独自の判断でIFRS対応に着手した。全社プロジェクトが始まる1年前のことだ。システムの観点からIFRS適用時の影響を分析して対応策をまとめ、王子製紙本体に提案した。「全社にかかわるプロジェクトにシステム部門から率先して提案したのはこれが初めて」(池永常務)である。

 影響分析の作業は、以前から付き合いがあったTISとともに、「王子ビジネスセンターでシステム化している業務にかかわる部分を中心に実施した」(同)。TISに依頼したのは、「他社のIFRS対応の進捗を入手する目的もあった」と池永常務は説明する。

 その結果を基に、システム対応に焦点を当てた対応策をまとめた報告書を作成し、王子製紙の経営管理本部に提出した。経営管理本部は現在、IFRSの全社プロジェクトを管轄している。

 11年4月からは、ERPパッケージや連結会計パッケージのバージョンアップといった対応策を実施する(図1)。全社プロジェクトはようやく、IFRS適用時の影響分析を完了したところだ。

図1●王子製紙のIFRS対応プロジェクトの計画
図1●王子製紙のIFRS対応プロジェクトの計画
システム子会社である王子ビジネスセンターが先行してプロジェクトに着手した
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2年間の対応期間を確保

 王子ビジネスセンターが全社プロジェクトに先駆けて作業を始めたのは、IFRSの適用開始時期から逆算して、11年4月から具体的な作業に着手しないと間に合わない恐れがあると考えたからだ。

 王子製紙はIFRSの適用開始を15年3月期と想定している。12年にIFRSの強制適用が決まった場合、最も早いといわれている適用開始時期である。

 このスケジュールでは、13年4月までにIFRS対応の作業を終えるのが理想的だ。強制適用の前年度は「比較期間」として、IFRSと日本基準の両方に基づいた連結財務諸表を作成する必要がある。15年3月期にIFRSの適用を開始するのであれば、比較期間は14年3月期。その期首である13年4月までに、IFRS対応の作業を完了しなければならない。システム対応に2年をかけるとすると、11年4月に着手する必要があった。

 一方、王子製紙全社のIFRS対応プロジェクトは、10年9月に50人程度で発足。11年3月末までIFRS適用時の影響分析を進める。その結果を受けて、4月から具体的な対応策の立案に乗り出す計画だ。

 王子ビジネスセンターも全社プロジェクトに参加し、影響分析などを実施している。「プロジェクトを管轄する経営管理本部とコミュニケーションを密に取りながら、作業を進められている。システムの観点でどのような対応策が可能かをまとめ、経営管理本部に事前に報告したことが効いているようだ」と池永常務は話す。