会計財務部門はプロジェクト発足前に、IFRS(国際会計基準)に基づいた会計処理などを説明した「論点整理シート」を準備した。各チームは論点整理シートをたたき台にして、実際の現場での作業を考慮した「論点整理」を作成している()。

図●花王のグループ経理規程の作成方法
図●花王のグループ経理規程の作成方法
色々な立場の関係者が参加し、「現場で利用できるか」という観点で検討する
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 論点整理の作成過程で重視しているのは、「現場と会計財務部門との議論」(三田慎一取締役)だ。IFRSの求める会計処理を実施する際に「会計処理を実現するために必要な情報を入手できるか」「業務上の課題は何か」「複数の対応方法がある場合、どのような処理を採用するか」といった点を中心に議論している。

 現場の声を反映した一例が、固定資産の減価償却で利用する耐用年数の設定だ。花王はこれまで、法定耐用年数を利用していた。IFRSでは、実際に現場で利用している機器や設備の使用状況から耐用年数を設定することを求めている。チームメンバーとして参加している工場の社員が出した意見を取り入れ、ある設備の耐用年数を7年から11年に延ばした。

 ただし、現場の声を多く取り込めばよいわけではない。IFRSが求める会計処理を実現できなければ本末転倒だ。現場とIFRSが求める会計処理とのバランスを取るために、各チームには必要に応じて外部のメンバーを入れている。

 外部メンバーとして監査法人トーマツの担当者のほか、システムがかかわる場合は同社が利用しているERPパッケージの開発元であるSAPジャパンの担当者が参加している。

 論点整理がまとまったら、チームごとにグループ経理規程に落とし込んでいくことになる。グループ経理規程の作成には「最低でも1年~2年半はかけたい。あせらずに準備していく方針だ」と三田取締役は言う。