IFRS対応プロジェクトでは、現場をいかに巻き込むかが重要な鍵を握る。IFRSの適用による影響を正しく見極め、効率よく対応するには経理・財務部門やシステム部門だけでなく、社内の関係部署の協力が欠かせないからだ。

 現場の巻き込みを意識して進めているのが花王である。同社は2011年2月に「IFRS導入プロジェクト」を発足。グループ全体でIFRSに基づいた会計処理を実施するための基礎となる「花王グループ経理規程」の作成に着手した()。これに先立ち、10年5月から9月まで情報収集や研修を実施した。

図●花王のIFRS対応プロジェクトの計画
図●花王のIFRS対応プロジェクトの計画
現在は強制適用の時期を見極めながら、グループ経理規程を作成している
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 IFRS導入プロジェクトには、計50人が参加している。財務・経理部門に当たる会計財務部門の担当者に加えて、販売や研究開発、工場といった現場の担当者が含まれる。全体の5割が、会計財務部門以外の担当者だ。

 研修でも現場の社員の参加を積極的に促した。研修は2372時間実施し、延べ593人が参加した。「社員同士で誘いあって参加してほしいと社内に呼びかけた」。会計財務部門を統括する取締役執行役員の三田慎一氏はこう話す。三田取締役はIFRS対応プロジェクトを「全社を挙げて良い作品を作りあげる取り組みだ」と表現する。

「現場で使える」を目指す

 IFRS導入プロジェクトで作成するグループ経理規程は、花王グループ全体の会計処理の考え方や実践方法をまとめた文書だ。IFRSは連結グループでの対応を求めている。本社を含むグループ全体で共通の経理規程を利用することで、会計処理の方法を統一できる。IFRS対応の中核となる文書といえる。

 プロジェクトは、IFRSを構成する詳細な基準や業務ごとに10チームで構成する。販売、購買、有形固定資産、研究開発、棚卸資産、連結財務諸表、単体財務諸表、人事、財務、海外である。