ウィプロがプネに構える巨大なサービス拠点「PDC II」は、欧米の顧客向けのサービスに従事する社員がほとんど。プネからは120社超の顧客へアプリケーション運用やシステム運用、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などのITサービスを提供している。しかしここでは、ウィプロが初めて日本で獲得した大規模案件を手がけ始めた。それが世界中に事業展開するプリンター大手、OKIデータのERP開発・運用だ。

 ウィプロのプネ拠点では、欧米向けに加え、オーストラリアなどアジア・パシフィック地域向けのサービスを手がける事例も増えており、グローバル化が進む日本企業からの受注も増加してくる可能性がある。「アウトソーシングに対する日本企業の意識も変わりつつあり、日本での受注獲得の追い風になりえる」(ウィプロでPDCを統括するアニル・サマント ゼネラル・マネジャー)。

厳重に管理されたオフィス内に専任の担当者を配置

写真36●OKIデータのシステム運用を手がけるPDC II内のオフィス棟の一つ「S2」
写真36●OKIデータのシステム運用を手がけるPDC II内のオフィス棟の一つ「S2」
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 OKIデータのERP運用を手がけているのは、PDC II内の「S2」と呼ばれるオフィス棟(写真36)。「Flex Delivery Center」と呼ばれる、アプリケーション運用を担当するセンターがこの棟に設けられているのだ。

 内部の写真撮影は一切厳禁。入退出の時間と名前の記入に加え、持ち込んだパソコンのシリアルナンバーも記入する必要がある厳重警戒ぶりだ。センターの中に入ると、独SAP製ERPなどの機能モジュールごとに担当者の席が分けられている。これらの担当者は、顧客ごとの専任ではなく複数顧客に対して、機能モジュールごとに運用や問い合わせに対応する体制だ。複数顧客向けの「シェアード型」運用サービスとすることで、担当者の技術力向上が見込めてサービス品質を上げられる一方で、顧客の利用コストも下げられるメリットがある。

 この運用センターの一番奥に、OKIデータの担当者が集まっている。OKIデータ向けのサービスはシェアード型ではなく、専任型と呼ばれるサービスタイプ。同社の専任担当者は総勢25人程度で、シフト制を敷いて24時間体制で運用に当たる。この一角にはOKIの社旗が掲げられており、日本と英国、米国時間が表示された時計が三つ並んでいる。これら三つは、アジア、欧州、米州のOKIデータの拠点がそれぞれ使っているERPシステムが設置してあるエリアだ。