KDDIは2011年4月18日、FTTHサービス「auひかり」のユーザー向けに、IPv6アドレスの割り当てを同日以降に順次行うと発表した。技術面、サービス面における影響について、同社の担当者に聞いた。

 KDDIは、IPv4アドレスによるインターネット接続に加え、IPv6アドレスによる接続も可能とする「IPv4/IPv6デュアルスタック方式」による接続サービスを追加料金なしで提供する。これはIPv4アドレスの枯渇に備えた対策であり、既存の利用者から見てすぐに利用状況が大きく変わるわけではない。IPv6接続サービスが真価を発揮するのは、IPv4アドレスの枯渇後に、IPv6接続ユーザーのみを対象としたコンテンツやサービスが提供されるようになった頃になる。

IP電話やIPTVなど、サービスのv6対応はこれから

 IPv4とIPv6には互換性がない。KDDIでは、IP電話やIPTVサービスなどIPv4を使って提供しているサービスについて、今後IPv6への対応を順次進めていく方針である。ただし、今回開始したIPv4/IPv6デュアルスタック方式の場合、どのユーザーも既存のIPv4向けサービスは利用できる。そのため各サービスの具体的なIPv6への対応については、KDDIが持つIPv4アドレスが枯渇するまでの数年内に実施することを念頭に「これから具体策を検討する段階」(KDDI 技術企画本部 ネットワーク技術企画部 企画管理グループの鶴昭博課長)という。

 IPv4を使って提供しているサービスをIPv6に対応させるには、サーバーをIPv6対応のものに差し替えるだけでは済まない。「IP電話における優先制御など、IPv6環境でどうやって実現するか検討が必要な要素がいろいろある」(KDDI 技術企画本部 ネットワーク技術企画部 企画管理グループの川島倫央課長補佐)ためだ。また、IPv6に対応したサービスと端末が直結して動いたとしても、実際の利用環境ではその間に様々なネットワーク機器が介在している。「古い機器を経由しても問題なく動作するかなど、実際にサービス提供が可能か検証しながら準備を進める必要がある」(川島課長補佐)のも、IPv6対応に時間がかかる理由である。

 さらに、同じサービスをIPv6とIPv4で二重に運用することによる収益への影響も無視できない。KDDIではIPv4環境を極力延命しながら、IPv6対応を進める考えだ。IPv4環境を延命する方法としては「他社で使っていないIPv4アドレスを譲渡してもらったり、IPv6のパケットをカプセル化してIPv4と共存させるなど、新しい対策がいろいろ出てくる」(鶴課長)という。

コンテンツ事業者や家電の対応遅れを懸念

 KDDIでは今後IPv6への対応を進めるに当たり、パソコン以外の端末がIPv6にどう対応するのかや、自社以外のコンテンツ事業者が提供しているサービスの対応動向に注目している。

 WindowsやMac OSなど、パソコン用の代表的なOSでは、IPv6対応は既に済んでいる。一方、ネットワーク対応のデジタル家電やスマートフォン、タブレット型端末などのパソコン以外の機器では、今後IPv6への移行が進むにつれて問題が出てくる可能性がある。

 例えばネット対応家電では、そもそもIPv6に対応していない製品が多い。そのためこの先IPv6の利用が進み、IPv4のサポートがなくなった場合に、こうした製品ではネット接続機能がまったく利用できなくなる可能性がある。またそれ以前に、利用しているインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)がIPv4延命策の一つである「キャリアグレードNAT」を導入し、さらにユーザー宅でもNATを使う「2段NAT」の状態になった場合に、リモート予約など、ネット対応家電の一部機能が利用できなくなる可能性があるという。

 スマートフォンなど、パソコン用のOSほどIPv6機能が十分に作り込まれていない端末では、IPv4とIPv6を同時に使った場合にネット接続が遅くなる「IPv6-IPv4フォールバック」といった問題が起きる可能性もある。この問題は端末側のソフトウエアで対応可能だが、一般ユーザーによるIPv6の利用は世界でも日本が先行している状況で、端末やOSによっては対応が遅れがちだという。

JCNやJ:COMとは情報交換、対応は個々に

 KDDIは、同社のグループ企業であるケーブルテレビ事業者のジュピターテレコム(J:COM)やジャパンケーブルネット(JCN)とは、IPv6対応に関して情報交換を行っている。ただしFTTHとケーブルテレビでは採用している技術が異なり、対応策も異なることから、具体的なIPv6への対応については個々の事業者ごとに行っているという。