総合ランキングの場合、知名度が高い大企業が、上位に入りやすい。何の企業研究もせず「とりあえず大手企業」を志望する学生も少なからずいるからだ。学生の本音でIT業界各社を評価するのであれば、「その会社を、なぜ選んだのか」という志望理由別ランキングが参考になる。

 本調査では第1~第3志望の企業について、その志望理由を「会社の魅力」「仕事の魅力」「雇用の魅力」に分けて尋ねた。総合ランキング50位までに入った企業を対象に、それぞれの志望理由が志望者に占める割合の高い順にランキングした(図3)。

図3●志望理由別ランキング
図3●志望理由別ランキング
入社したい第1~第3希望の企業について志望理由聞いた。総合ランキングが50位以内の企業を対象に、志望理由ごとにその回答比率の高い企業をランキングした。例えば、「経営者・ビジョンに共感」で1位の住商情報システムの場合、同社を志望する学生の45.5%が「経営者・ビジョンに共感」を志望理由に挙げている
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 まず注目したい点は、15ある志望理由別ランキングの上位3社のなかに、総合ランキングのトップ10に入っている企業が一つもないことだ。NTTデータや富士通、楽天、ヤフーといった名前は見当たらない。

 「こういう理由があるから、この会社で働きたい」という明確な理由を持った学生が集まるのは、個性が光る中堅SIerやシステム子会社、ネット企業である。

 「会社の魅力」では「経営者・ビジョンに共感」を挙げる学生が464人と最も多い。このランキングで1位を獲得したのが、住商情報システムだ。中谷光一郎執行役員人事部長は、「1位は光栄なこと。ただ、パンフレットをリニューアルした程度で、何か特別なことをしたわけではない」と説明する。

 同社における採用活動の特徴は、2次選考に進んだ約500人の学生を対象に、一人当たり1時間30分もの時間を割いてじっくりと面接することだ。面接に経営者は参加しないが、「学生に真摯に向き合う姿勢が評価されたのではないか」と中谷執行役員はみる。

 仕事の魅力としては、「社会に役立つ仕事ができる」を挙げる学生が多い。この志望理由の1位を獲得したのは、富士通エフ・アイ・ピーである。「当社の仕事は地味だし、脚光を浴びることも少ない。環境衛星の情報分析システムなどを通じて、当社が社会に貢献していることが学生に伝わっていて安心した」と、岩佐勝人材開発部長は語る。

図4●志望職種別ランキング
図4●志望職種別ランキング
総合ランキングが50位以内の企業を対象に、志望職種ごとにその回答比率が高い企業をランキングした。例えば、システムエンジニア/プログラマ分野で1位の新日鉄ソリューションズの場合、同社を志望する学生の67.3%がシステムエンジニア/プログラマを志望している
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 今回の調査では、志望職種別のランキングも作った(図4)。システムエンジニア/プログラマを志望する学生の人気では、新日鉄ソリューションズが1位だった。同社を志望する67.3%がシステムエンジニアを志望する。同社は図3で示した志望理由別ランキングの「技術力がある(会社の魅力)」でも1位である。技術職を目指す学生の支持を集める。

 プロジェクトマネジャーでは、1位のディー・エヌ・エーをはじめ、ミクシィやグリーなどネット企業が上位に入った。学生は「プロジェクトマネジャー」という言葉から、新しいネットビジネスの企画・開発プロジェクトのリーダ ーをイメージしたとみられる。