IPアドレスの管理団体であるJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)およびAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)のIPv4アドレスの在庫が枯渇し、いよいよIPv6によるインターネット接続が必要となる時代がやってきました。NTT東日本とNTT西日本(以下、NTT東西)では、2009年8月6日に総務省から接続約款変更の認可を受け、本年度(2011年度)よりプロバイダー(ISP)とそのユーザーに対して、IPv6インターネット接続機能を提供すべく準備を進めてきました(注1)。

注1:2011年6月1日から、「トンネル方式」を「インターネット(IPv6 PPPoE)接続機能」として提供を開始しました

 NTT東西がNGN(次世代ネットワーク)による光ブロードバンドサービス「フレッツ 光ネクスト」上で提供する接続の方法は、「トンネル方式」と「ネイティブ方式」の2種類があります。どちらの方式も、NGNが網内のサービス提供用に利用しているIPv6通信とIPv6インターネットへの通信を両立させるための工夫がなされています。本連載では、トンネル方式の特徴や使い方を説明します。

トンネル方式の特徴を理解する

 そもそも、トンネル方式はどのような接続方式なのでしょうか。

 実は、すでにNTT東西のフレッツサービスで提供しているIPv4インターネット接続は、トンネル方式で提供されています。そこでまず、IPv4インターネット接続におけるトンネル方式について、簡単に振り返ってみましょう。

 NTT東西のフレッツ網は、既存のフレッツ網(地域IP網)であれNGNであれ、閉域のIPネットワークです。そしてこれらのIPネットワークを用いて、ユーザーとISPを結ぶ機能(コネクティビティ)を提供しています。この機能を利用して、ISPはユーザーにインターネットへの接続性(リーチャビリティ)を提供しているのです。

 ISPは、フレッツ網を専用線やADSLのようなレイヤー2のリンクのように利用しています。これを実現するのが、「トンネル」という、もともとはVPN(Virtual Private Network)のために開発された技術です。フレッツ網では、PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)をトンネル方式のプロトコルとして採用しています(注2)。

注2:NTT西日本の「フレッツ・光プレミアム」を除きます

 通常VPNは、インターネットのようなパブリックなネットワーク上に、企業のプライベートなネットワークを仮想的に構築する技術です。ところがフレッツでは、このインターネットとプライベートネットワークの関係性を逆転させて、インターネットへアクセスするために、プライベートネットワークにPPPoEのトンネルを通しています。

 IPv6インターネット接続のトンネル方式でも、基本的な考え方は、この方法と同じです。フレッツ網をPPPoEのトンネルで通り、IPv6インターネットへ向かいます。ユーザーがNTT東西と結ぶ契約という点でも、既存のIPv4接続機能と同様です(注3)。フレッツ 光ネクストに加入していれば、利用にあたってNTT東西への追加の申し込みは不要です。

注3:現時点では、フレッツ 光ネクスト ビジネスタイプ、ファミリー・ハイスピードタイプ、ファミリー・エクスプレスタイプ(*)、ファミリータイプ、マンション・ハイスピードタイプ、マンション・エクスプレスタイプ(*)、マンションタイプがIPv6対応しています(*が付いたサービスはNTT西日本のみ)

IPv6専用のトンネルをもう1本作る

 いま説明したように、トンネル方式のIPv6インターネット接続は、トンネル方式のIPv4インターネット接続と同じに見えるかもしれません。では、これら2つの方式は、どこが違うのでしょうか。

 ネットワーク構成の観点からは、IPv6インターネット接続には、新たにPPPoEトンネルを終端する装置などがユーザー宅に必要となる点が大きな違いになります(注4)。この装置は、「IPv6トンネル対応アダプタ」(以下、アダプタ)と呼ばれます。IPv4インターネット接続では、フレッツ網による既存のサービスと同様、ホームゲートウェイ(HGW)などでトンネルを終端するためアダプタは不要です。アダプタの役割については、本連載の後編で説明します。

注4:パソコンなどの端末で直接トンネルを終端することも技銃的には可能ですが、その場合は端末自身でNGNとISPのIPv6プレフィックスを適切に使い分ける必要があります。本稿では、IPv6インターネットの利用シーンとしては想定していません