経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、ビジネスの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。マイクロソフトが主張する「IT基盤のあるべき姿」に続き、今回は、その実現に向けてマイクロソフトが重要視しているテクノロジーを紹介する。(ITpro)

 次世代IT基盤を支える“具体的なテクノロジー”について、少し先の未来を見据えながら、1年後もしくは3年後に多くの企業で実現してほしい具体的なIT像を、マイクロソフトが有する製品やテクノロジーを用いながら描いてみる。

 当然ながらマイクロソフトが考えるテクノロジーは、製品やサービスに組み込まれていく。そのため、テクノロジーを具体的に解説しようとすれば、システム構築の要素技術である当社製品に触れざるを得ない。以下の解説を、マイクロソフト製品の紹介だと切り捨てるのは容易だが、その裏で動くテクノロジーの本質から“次世代”のヒントを見つけ出していただければ幸いである。

 もちろん、頭の中で誰もがイメージできる想像図を描いたところで根拠は乏しい。別掲記事では、マイクロソフトが考える「次世代IT基盤のあるべき姿」について、次の三つの普遍的な観点から解説した。

●Productivity=便利で生産性の高いソフトウエア
●Secure Infrastructure=使いたい時に、いつでもどこでも使える信頼できるプラットフォームとデバイス
●Development=使いたいアプリケーションを容易に作り出せる環境

 これから書く論点の多くは、これら三つの観点が根拠になっている。

Productivityを実現する具体的なテクノロジー

 「Productivity」の概念は、マイクロソフトのすべての製品やサービスに盛り込まれている。だが、分かりやすい例として「Office」というブランドを中心に見てみることにしよう。

 ちなみに、Officeというブランドは、ExcelやWord、PowerPointといったPC上のソフトウエアだけでなく、メールサーバーや情報検索ポータルなどのサーバー製品を含むビジネス上の生産性向上を目指した製品の総称としてブランディングされている。

 まず、生産性の高い情報インフラ構築を整理すると10のステップに分類できる(図1)。

Step1:ユーザーIDの管理と認証基盤 = Active Directory
Step2:ファイル管理基盤 = FCI(File Classification Infrastructure)
Step3:メッセージングシステム = Exchange & Outlook
Step4:リアルタイムコミュニケーション(チャットやビデオ会議) = Lync Technology
Step5:IT + Voice = Lync & Exchange
Step6:情報共有のより所(ポータル) = SharePoint Technology
Step7:企業内統合検索基盤 = SharePoint & Fast Technology
Step8:情報セキュリティ対策 = Rights Management + Forefront + DirectAccess
Step9:クラウド化 = BPOS & Office 365 + Federation
Step10:業務システム化 = Dynamics(xRM)

図1●Productivity を支えるテクノロジーの全体イメージ
図1●Productivity を支えるテクノロジーの全体イメージ
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 これらが“次世代”を語るほど新しい話には見えないかもしれない。だが、それは、情報インフラがITやネットワークと共に長らく進化を続け、成熟期を迎えつつあるのだから当然だ。しかし、一般的なテクノロジーは想像できないほどの革新を繰り返すのではなく、既存の技術を元に成長し、他の技術と融合していくものである。“次世代”を語るうえでは、この“成長”と“融合”に大きな意味があると考える。

 例えば、Productivityの主役である「人」の管理は、Step 1に位置付けられる。メールやチャット、音声チャット、電話番号、さらには部署名や役職、顔写真までものすべてが、一つのIDに紐付いているからだ。一つのIDと他の機能の融合が、複雑化しかねないITをシンプルに保つ。もし、このIDを整備できていないのであれば、「次世代」のためには、ここから始めるべきだろう。