前回は、6rdが考え出された背景と基本部分を紹介しました。今回は、6rdの動作の詳細を見ていきます。ここでは、6rdの運用を開始するための基本的な手順を、6rdのプロトコル仕様を定めているRFC5969に沿って説明します。

6rdの構成パラメーター

 IPv6パケットのヘッダーの情報からトンネル終端装置(トンネルエンドポイント)を導出するためのルールを6rd-BRと6rd-CEにそれぞれ設定します。ISP(インターネットサービスプロバイダー)は、同じ6rdドメインに属する6rd-BRと6rd-CEに対して同じルールを設定します。このルールは、以下に挙げる四つのパラメーターから成り立ちます。

 (1)IPv4MaskLen
 (2)6rdPrefix
 (3)6rdPrefixLen
 (4)6rdBRIPv4Address

 以下では、これらのパラメーターがどのように6rd-CEと6rd-BRで使われるかを説明します。

6rdにおけるPrefix delegation

 6rd-CEは、IPv6プレフィックスを決定するためにPrefix delegationを行います。Prefix delegationとは、あるネットワーク機器から別のネットワーク機器にIPv6プレフィックスを移譲することです。6rd-CEは平たく言うと、家庭内に設置されるブロードバンドルーターとかホームゲートウエイなどのCPE(Customer Premises Equipment)と呼ばれる装置に6rd機能が実装されていると考えてください。ルーター機能付きのADSLモデムやCATVインターネットに使われるケーブルモデムなどが6rd機能を持つことがあるかもしれません。

 さて6rd-CEはまず、ISPのIPv4ネットワークに接続し、ISPからIPv4アドレスを取得します。ここでは多くの場合、PPPoE(PPP over Ethernet)やDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を使用します。6rd-CEは、取得したIPv4アドレスをWANインタフェース、つまり外部接続インタフェースに設定します。このとき設定されたIPv4アドレスを基にして、この6rd-CEが使用することができるIPv6プレフィックスを導出します。このとき使われる設定パラメーターが、IPv4MaskLenと 6rdPrefix、6rdPrefixLenの三つです。

 最も単純な例を挙げてみます(図1)。例えば6rd-CEがISPから取得したIPv4アドレスが192.0.2.10とします。6rd-CEに設定されている6rd用のプレフィックス(6rdPrefix/Length)が2001:db8::/32のとき、6rd-CEの宅内LANに使用するIPv6プレフィックスは、2001:db8:c000:020a::/64となります。ちょっとわかりにくいですが、6rdドメイン全体で使う6rdPrefix/Lengthである2001:db8の後ろに、6rd-CEが取得したIPv4アドレスである192.0.2.10を足す(16進数表記で"0xc000020a"となる)のです。これが6rdの「アドレスマッピング」ルールです。このように導出された6rd-CEのIPv6プレフィックスを、6rd delegated prefixと呼びます。このプレフィックスは、LAN側インタフェースを通じて内部ネットワークに接続されるホストがIPv6アドレスを生成する際に、ネットワークプレフィックスとして利用されます。

図1●6rdが使うプレフィックスの構成<br>6rdドメイン全体で使うプレフィックスに6rd CEが取得したIPv4アドレスを足したものを、6rd delegated prefixとして使う。
図1●6rdが使うプレフィックスの構成
6rdドメイン全体で使うプレフィックスに6rd CEが取得したIPv4アドレスを足したものを、6rd delegated prefixとして使う。
[画像のクリックで拡大表示]