情報処理推進機構(IPA)は5月20日に、IT人材に関する調査結果をまとめた「IT人材白書2011~未来指向の波を作れ 今、求められる人材イノベーション~」を発行した。本特集では、「IT人材白書2011」の調査結果を抜粋して、5回に分けて解説していく。
第1回目の今回は、IT企業およびユーザー企業における、IT人材の「量」と「質」に対する過不足感の変化と、グローバル化がIT技術者に与える影響について見ていこう。
8割以上の企業が、IT人材の「質」に不足感
まずは、IT企業における、IT人材の「量」と「質」に対する過不足感を見てみよう。
図1と図2は、IT企業に対して「御社では、事業戦略上必要なIT人材を、現在、十分に確保できていますか。『量』と『質』の両面における御社の人材の過不足感として、当てはまる番号に○をつけてください」と尋ねた結果である。選択肢は、「大幅に不足している」「やや不足している」「特に過不足はない」「やや過剰である(削減や職種転換などが必要)」の4つだ。
2007年、2008年の調査では、IT人材の量が「大幅に不足している」または「やや不足している」と答えた企業の割合は、7割~8割にも上っていた(図1)。これが、2009年の調査では、48.8%と大幅に減少。今回の調査も48.9%と、2009年の調査とほぼ同じだった。数年のスパンで見ると、明らかにIT人材の「量」が「不足している」と考えている企業は減ってきている。
一方、IT人材の「質」については、「大幅に不足している」または「やや不足している」と答えた企業の割合は、8割を超える(図2)。この割合は、2007年調査から大きな変化はない。質に対する不足感は、相変わらず高い水準で推移しているといえよう。
次に、ユーザー企業における人材の「量」と「質」に対する過不足感について見てみよう。
図3と図4は、ユーザー企業に対して「御社では、現在、組織の役割を遂行する上で必要なIT人材を十分に確保できていますか。『量』と『質』の両面における御社のIT人材の過不足感として当てはまるものに○をつけてください」と尋ねた結果だ。選択肢は、IT企業に対する質問と同様、「大幅に不足している」「やや不足している」「特に過不足はない」「やや過剰である(削減や職種転換などが必要)」の4つである。
図3を見ると明らかなように、ユーザー企業でも、IT人材の「量」が「大幅に不足している」または「やや不足している」と答えた企業の割合は、2008年以降、徐々に減ってきている。
一方、IT人材の「質」については、IT企業と同様に、「大幅に不足している」または「やや不足している」と答えた企業の割合は8割を超える(図4)。この傾向は、2008年以降、変わっていない。
このように、IT企業、ユーザー企業ともに、ここ数年で、IT人材の需要は「量」から「質」に大きく変化しつつある。こうした中で、IT技術者がキャリアアップするためには、よりいっそう、自らの「質」を向上させるスキルアップの努力が必要になるだろう。