筆者がAndroidが「興味深い」と思う理由は主に3点ある。進化のスピードが早く、普及のスピードが早く、大勢の開発者を惹きつけている。ここで「進化のスピードが早い」とは、主に「Android OSのバージョンアップのペースが速い」、「端末の進化のペースが速い」ことから来ている。端末メーカーが、新技術を投入したAndroid端末を積極的に市場に送り出していることが、Androidの魅力といえる。
 
 Android端末の動きについて、先に「2010年秋冬のAndroidスマートフォン14機種レビュー」という記事を執筆した。今回は、2011年の春モデル6機種を試用したので、その報告をしたい。

 6機種の内訳は、NTTドコモの「MEDIAS」と「Xperia arc」、KDDIの「IS05」と「EVO」のスマートフォン4機種に、KDDIの「XOOM」、NTTドコモの「Optimus Pad」のタブレット2機種である。秋~冬~春と20機種を試したことになる。

 以下、記事では各機種の印象を中心に記していく。印象については筆者の主観に左右される部分が大きいことを最初にお断りしておく必要があるだろう。各機種で共通に多用したアプリは、GMail公式アプリと、Twitterクライアント「twicca」である。操作性、視認性などはこの2つのアプリを中心に見ている。

 印象に左右されない客観的な評価尺度として、処理性能を測る「Quadrantベンチマーク」のスコアと、Androidアプリ「MultiTouch Tester」で調べたマルチタッチ認識点数を示すことにする。QuadrantベンチマークはCPU、メモリの読み書き、2D/3Dグラフィックスの処理性能の総合点を示す。ただし、仮想マシン上の実行環境の常として、ベンチマークアプリ実行のたびに異なる数字が出る。数字は一つの「目安」として見て頂きたい。今まで各種端末を評価してきた経験則として、Android 2.2以降のOSを搭載した端末の場合、Quadrantベンチマーク結果が800より高い端末であれば「サクサクと軽快に動く」と見てよいだろう。

 マルチタッチ認識点数の意味だが、多くのAndroidアプリでは2点のマルチタッチを認識できれば実用上は問題ない。ただし、多くの点を認識できるということは、それだけ新しい世代の技術を投入していることの証拠といえる。2010年1月に登場した端末「Nexus One」はマルチタッチ認識点数は2点、それも2点を完全に分離せず、2点に囲まれた矩形として認識する制約付きだった。2011年5月登場の「Nexus S」は5点を認識する。最新のAndroid 3.0タブレットは10点を認識できる。マルチタッチの性能もこの1年で格段に向上したことが分かる。

 以下、各機種のレポートである。

最薄部7.7mmの日本仕様搭載機MEDIAS

 NTTドコモが販売する「MEDIAS N-04C」(NECカシオモバイルコミュニケーションズ製、写真1、2)は、最薄部7.7mm、重量105g。日本仕様(FeliCa、ワンセグ、赤外線通信)を搭載する。画面サイズは4インチ、表示解像度はFWVGA(480×854画素)。Android 2.2を搭載する。画面サイズが4インチ大きく日本仕様搭載でありながら、非常に薄く軽い。意欲的なスペックの機種といえる。

写真1●MEDIASの外観。4インチと大きな画面サイズながら薄型軽量である
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写真2●MEDIASのホーム画面
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 Quadrantベンチマークのスコアは1111と良好である。マルチタッチの認識点数は5点と、Androidスマートフォンの中では最高水準である。ただし、指の触れ方により4本目、5本目の指を時々認識しなくなる現象を体験したが、実用上は問題ない。操作感は十分に軽快だった。ただ、Twitterクライアントのスクロールの様子を見ると、時々「ひっかかり」のような速度のムラが出ることから、チューニングの余地はあるように感じる。今後のアップデートで操作性がさらに良くなることを期待したい。

 試用機を借り受けた時の状態では、待機時の電力消費がやや多めに感じられた。具体的には、フル充電から9時間30分の圏内での放置で電源容量が12%台に減った。ただし、この問題はOTA(On the Air)によるシステムソフトウエアのメジャーアップデートで目に見えて改善した。圏内であれば3日間は持つようになった。

 タスク一覧の画面には、タスク終了の機能が付いている(写真3)。タスク一覧画面に終了機能を持たせているのはシャープ機と似ている。また日本語入力ソフトATOKを搭載する。

写真3●MEDIASのタスク一覧画面。タスク終了の機能を持たせている
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 カメラは500万画素のCMOSセンサーを搭載し、十分に良い絵が撮れる(写真4)。ただし、他の最新機種と比べ特筆するような特徴は見当たらない。

写真4●MEDIASのカメラで撮影
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 この機種は意欲的なスペックではあるが、使っていて「惜しい」と思う点もいくつかあった。本体の四隅が角張った形状なので、本体をそのままポケットに入れていると服の布地に引っかかって取り出しにくい場合があった。物理ボタン(左からMenu、Home、Back)の操作感は、ストロークが浅く、タッチが固いので、「えいや」と押し込むように操作する必要がある。Androidではこの3種のボタンを多用するので、もう少し柔らかい感触に仕上がっていればなお良かった。