IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ITベンダー社内で、人事部門とシステム開発部門の雑談
ダメな“システム屋”の会話 人事部の中堅社員 「どうだ、今年4月に入社したばかりの新人の調子は?」
システム開発部門の中堅社員 「何だよ、久しぶりに会ったと思ったら、オレのことじゃなくて、配属された新人のことを聞くのか」
人事 「ごめんごめん、お前はいつも元気そうだからな」
シス 「実はあんまり元気じゃないんだけどね。それより新人のことだけど、今年はさらに真面目になったよなあ」
人事 「厳しい就職戦線を勝ち抜いて来た若者たちだからな」
シス 「前向きだし、気配りもある。ただ・・・」
人事 「ただ?」
シス 「あれじゃ、すぐに疲れてしまうんじゃないかな」
人事 「というと?」
シス 「いわゆる五月病なのかな。最初はよく頑張っていたのに、だんだん減速してきた新人がいるんだよ」
人事 「それは気になるな」
シス 「1本目に開発したプログラム、すなわち人生初の本番プログラムは良かったのだが。3本目ぐらいになってからかな、あまり元気がなくなって。画面ばかりを見つめることが多くなった気がする」
人事 「そうか。同じ部署の先輩が元気づけてくれないものかな」
シス 「そうさせたいところだけど、実は入社2年目あたりも要注意なんだよ。ちょっと元気がない」
人事 「ありゃ」
シス 「さらに言えば、入社10年目のオレも、最近、壁に当たっている感じがして元気がない」
人事 「おいおい、何を言っているんだよ。僕は人事部門に異動して3年目だけど、またシステム開発の現場に戻ってやっていけるか、心配で心配でしょうがないよ。社内で“最も元気がない人”かもしれないよ」
シス 「なんだ、全員そろって五月病かよ」
人事 「困ったものだね。五月病から脱却するいい方法はないかな」

ダメな理由:ギャップを埋められない

 前回(第34回)は「要件依存症」に陥ったダメな“システム屋”について指摘しました。今回は「ダメ」とまでは言えませんが、“システム屋”が陥りがちな五月病についての話です。

 人間には時期によって好調・不調があるのが当然ですから、五月病をもって「ダメな“システム屋”」だと決めつけることはできません。五月病は必ず脱出か回避が可能です。今回は“システム屋”にとっての五月病脱出法を考えてみたいと思います。

 4月に入社した新入社員が最初に経験するゴールデンウイークの連休や連休明け。このあたりで倦怠感や憂鬱に悩まされるのが五月病の典型的な症状でしょう。IT関連企業などでは、入社時研修が数カ月間にわたるところが多く、入社したばかりの5月はまだ研修中で症状が出にくいかもしれません。むしろ入社2年目で迎えるゴールデンウイーク・連休明けあたりに症状が出ることが多いかもしれません。

 五月病の主因を、「緊張の連続による精神的疲労の蓄積」だと考えるならば、対症療法として自分に合ったストレス発散法を見つけることに効果があるはずです。(ただし私は医療・心理学の専門家ではありませんので、専門家による連載も併せてご覧ください)

 しかし、ストレス発散によって「何とか仕事を続けられる」レベルを維持できたとしても、その後に再び倦怠感や憂鬱に悩まされないとは限りません。ストレス発散が生きる知恵であることは確かです。しかし、会社が要求する能力の種類・レベルと、自分が身につけている・身につけたい能力との間のギャップを埋めない限り、いつか必ず五月病に悩まされるものです。