日本マイクロソフトは4月26日、Webブラウザー新版「Internet Explorer(IE)9」の提供を開始した。最大の特徴は、GPU(グラフィックス処理専用プロセッサ)を使ってすべての画面描画処理を実行するなど、ハードウエアを活用した高速化の仕組みを大きく取り入れたことだ。

 GPUを搭載したPC上でIE9を動かすと、CPUのみのPCに比べて高速にWeb画面を描画できる。CPUよりも消費電力効率に優れるGPUを使うことで、PCの省エネ化にもつながるという。他の主要WebブラウザーもGPU活用を推進中。高速化競争は新たな段階に入った。

 IE9では、GPU活用による高速化のほか、HTML5仕様への準拠を進めた()。動作OSはWindows Vista SP2以降で、Windows XPでは利用できない。

図●「Internet Explorer 9」の強化点
図●「Internet Explorer 9」の強化点

 GPU活用による効果が特に大きいのは、HTML5仕様に沿った動的なWebコンテンツの描画・再生処理である。動画再生の「HTML5 Video」や音声再生の「同 Audio」、二次元画像描画の「SVG」、Webページのスタイルを定義する「CSS 3」による描画処理などだ。

 日本マイクロソフトはデモ用Webサイトで、様々なWebブラウザーのHTML5描画能力を比較できるようにした。同社によると、IE9は主要Webブラウザーのなかで、最も高速に各種のデモを処理できた。さらに同サイトのデモをノートPCで実行した場合のバッテリー持続時間は、IE9が最も長く3.54時間。2位はFirefox 4の3.21時間だった。

 これまでWebブラウザー高速化の主なテーマは、JavaScriptエンジン(JavaScriptプログラムの解釈・実行モジュール)の改善だった。マイクロソフトがGPUによるHTML5高速化へ舵を切ったのは、JavaScriptエンジンの性能差が「人が体感しづらいレベルまで縮まった」(IE事業担当の溝口宗太郎シニア プロダクト マネージャー)ことが背景にある。IE8のJava-Scriptエンジンの処理性能は、他の主要ブラウザーに比べて十数倍劣っていたが、IE9では僅差ながら首位になった。

 FirefoxやChromeもGPU処理機能を実装した。米マイクロソフトが3月に一部を披露した「IE10」は、HTML5仕様をさらに取り込み、GPUで高速化できるコンテンツを増やす。