システム開発プロジェクトの体制を構築することは、PM(プロジェクトマネジャー)の大事な仕事の一つである。システムの規模・特性・期間などを見極めた上で体制を構築しなければならない。体制の構築に当たって忘れてはならないのが、自社の社員と一緒に仕事をすることになる協力企業の選定である。この仕事をおざなりにするPMを見かけることがあるが、そのようなPMはプロジェクトスタート時点で既に自分の職務を放棄しているに等しい。

30代後半中堅社員Fさんの失敗

 ここまで大きな失敗もなくPMとしての経験を重ねてきたFさんは、ある中規模システム開発プロジェクトのPMを任されることになった。ちょうどその頃Fさんの会社は超大規模プロジェクトを受注していたので、自社の社員が手薄で、Fさんのプロジェクトでは協力企業を主力に体制を構築することになった。Fさんが体制を検討するに当たり、担当役員から次のような話があった。

担当役員:私の知り合いでAさんという人がいて、その人が先日独立してJ社という会社を立ち上げた。もし、まだ協力企業が決まっていないのであれば、J社についても考えてくれないか。Aさんは元の会社から優秀な若手社員を引き連れてきているからきっと役に立つと思う。

 これまでFさんと付き合いのあった協力企業はどこも超大規模プロジェクトに取られており、これから協力企業の選定をしなければならなかった。そこでFさんは「役員の紹介する会社なら大きな間違いも無いだろう」と、深く考えることも無くあっさりと引き受けてしまった。

 そのプロジェクトは要件定義・基本設計と順調だったが、詳細設計フェーズに入ってから雲行きが怪しくなる。これまで順調だった進捗が遅れだし、当初は1日遅れだったものが3日遅れに、そしてとうとう1週間の遅れになってしまう。詳細設計書やプログラムを見ると、とても経験者とは思えないようなレベルである。

 慌てたFさんはJ社と協議する。しかしJ社からの回答は、「業務要件の理解が足りないのかもしれないが、やがて追いつく。追いついたらこれまで以上の生産性を出すメンバーなのでもう少し様子を見てほしい」というものだった。そこで、Fさんは2週間待った。しかし一向に改善される気配は無い。それどころか遅延は拡大しているようにも見える。

 困り果てたFさんはJ社を紹介してきた担当役員に相談することにした。しかし担当役員からは「私は無理に使ってくれとはお願いしていないよ。J社を採用したのは君だろう。今さら何を言うんだ」と言われてしまったのである。結果的にプロジェクトは遅延し、全てはFさんの責任となった。