総務省が認可したNTT東西地域会社の四つの固定通信サービスに関する2011年度接続料に関して、これまでの議論の総括と今後の論点についてイー・アクセスの大橋 功 企画本部 本部長兼企画部長に聞いた。

 総務省が接続料の認可を2011年3月下旬~4月上旬にかけて行ったタイミングについて大橋氏は、「半分は震災があったのでしかたないという気持ちだが、半分は3カ月程度時期を遅らせてでも、もう少し議論の深堀りをしてほしかったという気持ちだ」と複雑な心境を語った。

 これまで事業者ヒアリングなどの場で同社は、必ずしもソフトバンクが主張する「OSU共用」のようなインフラ寄りの接続を求めたのではなく、光ファイバー上でNTT東西のIP電話と他事業者によるベストエフォート型のインターネット接続サービスを組み合わせられるような、DSLの業態に近いサービスレベルの接続モデルを提案したつもりだったという。しかし議論の流れが1分岐貸しが可能か否か、つまりソフトバンク案対NTT東西案という構図に二極化されてしまい、「当社の主張のような別案は十分検討されなかった印象が強い」という。

 イー・アクセスは今後の1分岐貸し議論において、ソフトバンクが主張するOSUの共用を前提とした案ではなく、サービス単位で事業者を組み合わせて利用できる仕組みの導入を改めて主張する方針である。「NTT東西がソフトバンク案に反対するのは、帯域制御の部分なども含めて共用しようとしているため。当社はベストエフォートのインターネット接続だけの共用を提案しており、NTT東西案でもソフトバンク案でもない」という。

 具体的な提案内容については、フレッツ光の網構成が公開されておらず推測を含むとしながら「OSU、OLTを束ねた集約スイッチがあり、この集約スイッチのコア網側で我々のネットワークと接続させてもらえれば、大きな改造をしなくてもサービス単位の事業者切り替えが可能になるのではないか」と説明した。こうした技術的な部分の検証も含めて、2011年度に行われる議論の前半で提案したい考えだ。

 将来原価方式で設定した接続料の乖離分を事後的に清算する「乖離額調整」については、「需要喚起を目的に積極的な需要を見積もった場合に適用する話としては理解できる」と述べた。ただし今回のNTT東西による申請内容では、接続事業者による利用も含めて見積もりが小さく、導入する必要性が見当たらないという。今回加入光ファイバーの接続料申請では、制度化を見送り特例として乖離額調整が認められたが、「今回の需要予測であれば、特例ですら認める必要はないのでは」と語った。

 なお、関西ブロードバンドなどのADSL事業者が、光ファイバーの1分岐単位での貸し出し実現などを目的に設立を進める「DSL事業者協議会」への参加については、「何も決まっていない」という。「接続事業者として意見の一本化が必要な場合は参加することもあり得るが、現時点では中立の立場だ」と説明する。