東日本大震災により、約4割の企業がネットワークを含む情報システム関連のトラブルに直面した。うち半数はBCP(事業継続計画)を策定していなかった──。

 日経コンピュータと日経BPコンサルティングが共同で、ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)やシステム部長などを対象にネット調査を実施した結果、こんな実態が明らかになった()。有効回答数は217社、調査期間は3月30日~4月5日である。

図●東日本大震災の情報システムへの影響
図●東日本大震災の情報システムへの影響

 トラブル内容として目立ったのが「電話など通信回線が不安定になった」(48.2%)と「停電によるシステムダウン」(40.0%)だ。地震発生直後は被災者の安否を気遣う電話やメールが急増し、通信事業者が9割前後の発信規制をかけた。これにより多くの企業が従業員の安否確認に手間取った。

 東京電力と東北電力が3月、供給能力不足を理由に「計画停電」を実施したことが、混乱に拍車をかけた。計画停電の対象地域に拠点を構える企業の19.6%が「在宅勤務など、ワークスタイルの柔軟化」を、16.7%が「データセンターの自家発電装置を拡充」を検討すると回答した。大災害に直面し、対症療法に追われるシステム担当者の姿が浮き彫りとなった。なかには「関西エリアに業務を移管する」と答えた企業もあった。

 本来なら、BCPはこうした災害に備えて策定すべきものだ。ところが情報システムがトラブルに遭った企業のうち、BCPを準備していたのは49.4%と半数に満たなかった。しかもそのなかで、BCPが「完全に機能した」と回答したのはわずか1社だった。

 調査に回答した企業からは「自社ビルなどの損壊は想定していたが、今回のような電力不足は考慮しなかった」といった意見が寄せられた。今回の震災が企業側の想定を超えた面もありそうだ。「BCPを作っていても、電気を止められたら部分的に役に立たなくなることがよく分かった。戦略を練り直す必要がある」という意見もあった。

 東京電力は長期停止中の火力発電所を再稼働させるなど、電力不足解消への努力を続けている。それでも、気温が上がる6月半ば以降の電力需給は不透明だ。情報システム部門だけでなく、全社を巻き込んでBCPの見直しや策定を急ぐ必要がある。