「2011年に入ってから、Androidを標的とした不正プログラムの出現ペースが急加速している」。そう語るのは、大手セキュリティベンダーの1社、トレンドマイクロの斧江章一 事業開発部長である。同社が4月15日、企業ユーザー向けに開催したスマートフォンセキュリティ対策セミナーでの発言だ(写真)。
斧江部長が指摘する通り、2011年に入ってAndroidを狙ったマルウエア(不正プログラム)が次々と見つかり、それらによってユーザーが被害を受ける危険性が日増しに高まりつつある。トレンドマイクロによれば、2月半ばから3月上旬までの1カ月弱の期間に限っても、少なくとも6種類の新たなAndroid向けマルウエアが出現したという。
例えば2月16日に出現した「ANDROIDOS_ADRD.A」は、壁紙アプリに偽装してユーザーの端末に侵入しようとするトロイの木馬型マルウエアである。ユーザーがだまされてアプリをダウンロードおよび実行すると、同マルウエアは「端末識別番号」や「アクセスポイント名」(APN)などの情報を勝手に収集し、外部のサーバーにこっそり送信する。
2010年12月に発見され、「Android初のボット」として話題をさらった「Geinimi」(ゲイニミ)というマルウエアも、2011年に入って感染が拡大している。新たに日本語版のAndroidアプリへの混入も確認された。
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Androidの「オープンさ」がマルウエアを呼び込む
Androidを狙うマルウエアが急増している背景には、「Android端末のシェアが世界的に急拡大し、(マルウエア作者などの犯罪者にとって)利益を生むビジネスになりつつある」(トレンドマイクロの斧江部長)という事情がある。
「愉快犯」から「利益追求型犯罪」へ。パソコンの世界で数年前に起こった大きな変化が、今まさにAndroidの世界でも起こりつつある。