中国には大連のほかにも、日本向けBPOサービスの拠点設立が活発化する地域がある。その多くは、上海の周辺都市である。

 上海の南に位置する浙江省の省都・杭州には、インド大手のインフォシス・テクノロジーズがBPOセンターを構える。「中国における日本向けBPOサービス事業は後発なので、IBMやアクセンチュアといった競合がBPOセンターを構える大連を避けて杭州を選んだ。その分、日本向けBPOをこなせる優秀な人材をそろえるのに苦労した」。インフォシス日本支店の安藤穣マーケティング&ストラテジー マネージャはこう明かす。

 現在はフィリップス日本法人などからBPOサービスを受託し、昨年から世界的に有名なアパレルメーカーの日本法人向けに経理業務を提供している。「2011年秋から急速にBPOサービスのRFI(情報提供依頼書)の受け取り件数が多くなっており、かなり追い風が吹いている」(同)。今後もグローバル企業の日本法人のBPO受託に向けて営業活動を続けていくという。

写真10●蘇州にあるトランスコスモスのBPOセンター
写真10●蘇州にあるトランスコスモスのBPOセンター
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 トランスコスモスは2010年12月、上海の北にある江蘇省の蘇州に、中国で5拠点目となるBPOセンター「大宇宙商業服務(蘇州)」を開所した(写真10)。総務、経理、人事、営業支援などのサービスを提供する。蘇州の拠点だけで2014年3月期に作業者を500人規模まで増やし、売上高10億円の達成を目指す。

 トランスコスモスの内村弘幸 理事 サービス統括ビジネスプロセスアウトソーシング総括 副総括責任者は「人事給与や総務、経理といった多くの社内プロセスを中国へ業務委託している当社の実績からいうと、コストを最大で5割削減できる」と話す。業務委託に際しては、個人情報を守る作業やセキュリティレベルの高い作業は日本国内のBPOセンターで、それ以外のデータ入力や業務処理は中国のBPOセンターで実施するように担当を分けている。「自社の実績に基づいた、セキュリティとコストのバランスを取ったBPOサービスをユーザー企業に提供していく」と内村理事は意気込む。

写真11●無錫にあるNTTデータのBPOセンター
写真11●無錫にあるNTTデータのBPOセンター
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 同じく江蘇省で蘇州のさらに北にある無錫には、NTTデータが「無錫華夏計算機技術」を構える(写真11)。NTTデータは今年から本格的に日本企業向けのBPOサービスを展開し始めた。この1月からみずほコーポレート銀行の中国法人の企画の下、中国進出する日本企業向けにBPOサービスを提供している。すでに6社から、経理業務の一部を受託しているという。

 NTTデータは2013年には、中国からのBPOサービス事業で40社から45億円程度を売り上げる目標を立て、無錫のオペレーターを現在の10倍の1000人規模まで増員する計画だ。この目標に向けてNTTデータブランドを活用するため、今夏、「無錫華夏計算機技術」の名称を「無錫NTT DATA」に変更する。さらに2012年には出資比率を56%から100%に高めて完全子会社化するという。