震災などで平常心を失いがちなときには、受け手の善意や好奇心などを利用する形でデマ情報が広く伝わってしまうことがある。また平常時であっても、まことしやかな偽情報がまれに出回る。
そこでまず、過去にどんなデマがあったのかを振り返る。それに対する注意喚起、対策などを報じた記事も参考にしてもらいたい。
これまで報じられた主なデマ
これまでITproが報じたデマを類型化すると5タイプに分けられた。
(1)「災害時の不安につけこむ」、(2)「コンピューターウイルスの不安につけ込む」、(3)「未知の新製品に関するまことしやかな嘘」、(4)「好奇心をそそる大嘘」、(5)「冗談を受け手が本当の話と誤解」――である。
(1)の災害時の不安につけ込んだ例としては、2011年3月の東日本大震災の発生直後、チェーンメールやTwitterで「コスモ石油工場勤の方から情報」というデマが広まったことが記憶に新しい。他に「体内の放射性ヨウ素を排出するには、ヨードチンキやうがい薬を飲用するべきだ」などとする情報も出回った。
(2)のコンピューターウイルスの不安につけ込むもの、は10年ほど前に相次いだ手口だ。正規のファイルをあたかもウイルスであるとして削除を勧めるものである。これから得られる教訓は、不安の対象となる事物の周辺ではデマが発生しやすいことだ。読み手は、自分の中にある不安な気持ちを自覚しながらネット情報に向き合わなければいけないのだろう。
(3)未知の新製品に関するまことしやかな嘘、の例としては、米Googleの「Chrome OS」のコードが流出したというデマや、128ビット版Windowsなどがある。こうした先端的な話題のデマは、善意で誰かに教えたくなる場合もあるだろうが、知ったときに受け手が軽い優越感を感じ他の人に広めたくなる心理を利用しているとも言える。あくまで噂は噂として、他の人にもある程度の疑念を持たせる形で伝える心構えが必要だ。
■Microsoft、無料ウイルス対策ソフトの定期的なリリースを計画
■「Microsoftが128ビット版Windowsを開発中」といううわさはデマ
(4)見ただけで分かるような大きな嘘は、ウイルスを添付したメールを開かせようと、興味をそそる見出しとして用いられることがある。
■「無料のインターネットは2012年に終了」というデマ・メールに注意
■「2012年、インターネットは終了する」――ウイルス添付のデマメール
(5)冗談を受け手が本当だと誤解して広まったデマとして、ジョークサイトからの「Facebookが3月15日に終了」という事例がある。急成長したネットベンチャーに対する漠然とした不信感が背景にあったのかもしれない。(3)のケースと同様、情報ソースや信頼度といった情報そのもののプロフィールとセットで人に伝える心構えが求められる。
主に米国で出回ったデマの例
もちろんこうしたデマが出回るのは日本に限らない。米国でも2001年の「9.11テロ」の後に、不安につけ込んだデマが出回った記録がある。
また、株価操作のためにデマが流されることが米国では時々起こっており、FBI(連邦捜査局)が犯人を突き止めて逮捕した事例もある。日本においても、株価を左右するような噂を流した投資家は、風説を流布したとして利益の没収や罰金刑を科される。
■同時多発テロが浮き彫りにした、非常時におけるメディアの役割
これまでの注意喚起と啓蒙
デマが多く出回るたび、注意喚起や啓蒙もなされてきた。ただしこうした警告がその後のデマ発生を食い止める決定打になったとは言えない。しばらくたつと、また不安心理などを巧みに突いたデマが流行するという歴史が繰り返されている。
識者からの意見としては、公式情報の発信側が説明能力を高めれば、公式情報とデマとの見分けがつきやすくなるとの指摘がある。また近年は「学校裏サイト」がデマの温床になっているとの警告もある。
■「震災関連のデマ拡散を防ごう」JAIPAが呼びかける文書を公開
■学校裏サイトで、今何が行われているのか~子どもとケータイの闇
解決策
ほとんどのデマは、ひとしきり行き渡ったあとに、その情報を否定する公式情報が発信されて終息する。だがITをうまく使えばデマの発生を抑えられるという提案も出てきた。
例えば、Googleリアルタイム検索を使えば、時系列でTwitter上でのツイートをたどることができる。初期に情報を広めたのがどんな人たちだったのかが分かるうえ、実際にデマ発信源のアカウントが特定されたケースがあったとも言われており、Twitter上でのデマ発信を抑制する効果が期待される。
また、Twitter上のデマと思えるつぶやきに対して、他の人からデマ報告が何件あるかを確認できるようなAndroidアプリも開発されている。
■「俳優の死亡説」や「漫画家の安否リスト」、ネットのデマにご用心
基礎知識
最後に、デマ関連の基礎知識を解説した記事を挙げておく。