写真8●損害保険ジャパンのBPO業務を受け持つインフォデリバのオペレーター
写真8●損害保険ジャパンのBPO業務を受け持つインフォデリバのオペレーター
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 BPO活用による狙いの二つめは業務スピードの向上だ。ここでは損害保険ジャパン(損保ジャパン)のケースを紹介しよう。同社は保険代理店からFAXで受信した自動車事故の連絡票のデータ入力業務を大連に委託する(写真8)。2009年12月の委託当初は15分ほどかかっていたが、昨年末にはこれを6分まで短縮した。処理スピードを2.5倍に高められた計算だ。

 スピードアップの最大の理由は、「大連の担当者にスピード第一の考え方を徹底したことにある」(損保ジャパンの井上靖英24時間サービスセンターサポート部課長)。委託当初は思うようにスピードが上がらなかった。井上課長らが直接現場に乗り込んで調べてみると、オペレーターは読めない文字に直面するたびに、周囲のオペレーターを巻き込んで「これは何と読むのか」と議論を始め、作業の手が止まってしまっていた。「スピードと品質のバランスが良くなかった」(井上課長)。

 井上課長らは3カ月に一度の頻度で大連の拠点を訪れ、「事故対応は1分1秒を争う仕事だ」「15分悩むなら分からないと返事をしてくれたほうが助かる」と繰り返した。同時に、委託作業のプロセスや入力チェック用のシステムも改善。チェック担当者が誤りなどを気付きやすいようにした。日々のメールなどでも、スピード重視の方針を繰り返し伝えた。

 損保ジャパンが入力時間の短縮を狙うのは、事故対応のスピードを速めるためだ。事故の連絡は、電話などによっても受け付けている。電話の場合は即座に事故対応に取り掛かることができるが、FAXの場合は受信してから契約者に連絡をするまでに時間がかかりがちだった。

 損保ジャパンの場合、事故連絡は月間約10万件あり、このうち3割はFAXで届く。「FAXも重要な受付チャネルであり、サービス強化が必要だった」(井上課長)。

図6●損害保険ジャパンにおけるBPOを利用した事故連絡票の入力業務の流れ
図6●損害保険ジャパンにおけるBPOを利用した事故連絡票の入力業務の流れ
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 大連への委託によって、FAXの対応時間を延長することもできた。日本で処理していたときには、人件費の観点から週末は対応業務を停止していた。現在は休日を含めて毎日、大連で対応する。

 業務スピードを向上させるために、損保ジャパンはもう一つ工夫を講じている。委託先を2社に分け、両社で競わせている(図6)。具体的には、インフォデリバとCSKに事故連絡票のデータ入力を任せている。「2社それぞれに両社のパフォーマンスを開示することで、スピードアップにつなげられた」(井上課長)。