【リコーリース】
「ディスプレイ2台体制」で80万枚の紙を削減

 リコーリースは、リース事業に伴う大量の紙書類をなくすために、独自の「イメージワークフローシステム」を2009年2月に開発。それからおよそ1年半後の2010年10月に、全国すべての営業所に同システムを導入し終えた。紙の削減効果としては、2009年度(2009年4月~2010年3月)には前年度と比較して、A4用紙換算で約80万枚の紙を減らすことができた。

 このペーパーレス化の成功のポイントは、与信審査の業務プロセスを完全にデジタル化するために、業務担当者ごとに2台のディスプレイを用意した点だ(写真1)。

写真1●二つのディスプレイを使って与信業務のペーパーレス化を推進
写真1●二つのディスプレイを使って与信業務のペーパーレス化を推進
リコーリースでは、大量の与信データに基づいて審査業務を進める。従来は大量の紙資料を担当者間で受け渡していたが、それらをスキャンしてデータ化することで、業務の効率を大幅に向上できた。
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 リコーリースがペーパーレス化に取り組んだ背景には、いくつかの理由がある。一つは、全国の営業所で書類があふれ返っていたことだ。同社は中小企業向けにリースを提供しているが、その与信審査には財務諸表、信用情報、調査用書類など、たくさんの書類が発生する。従来はそれらをすべて営業所ごとに保管・管理していたため、蓄積した書類がオフィスに収まりきらなくなってしまった。こんな状態ではセキュリティ面で問題があるため、書類を本社にいったん集約してから、倉庫会社に預けることにした。

 ただし、それらの書類を使う場合、倉庫から取り出して戻すという作業が発生する。紛失などを避けるために、バーコードでの管理が必要となった。だが、「どうせそうした作業が必要なら紙全体をデータ化してしまおう」というのが、与信審査の業務をペーパーレス化していくきっかけだったという。

業務処理に要する時間も大幅に短縮

 実は、与信審査に必要な書類をすべてデータ化するメリットは、紙をなくすこと以外にもある。従来は書類をまとめて営業所から本社へ受け渡しており、本社で処理を始められるのは翌営業日になっていた。データ化すれば、そうしたリードタイムを大幅に短縮できる。

 ただし、従来の与信審査では、紙の資料を作業者間で受け渡して審査の業務プロセスを進めていく方法を取っていた。このプロセスをデジタル化しないと、営業所からのデータもわざわざ印刷しなければならず、紙を排除することにはならない。そこで与信審査の完全デジタル化を狙って構築したのが、冒頭のイメージワークフローシステムなのだ(図1)。

図1●リコーリースでの「イメージワークフローシステム」による与信審査業務のペーパーレス化の仕組み
図1●リコーリースでの「イメージワークフローシステム」による与信審査業務のペーパーレス化の仕組み
リース業務には与信審査のために膨大な資料を参照する。従来はそうした紙の資料を、営業担当者、業務担当者、決済者の間で回していた(図では省略しているが、実際は何度もやり取りが発生する)。そこで同社は2009年に審査資料をすべてデータ化して運用する「イメージワークフローシステム」を構築した。
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 この業務の担当者の作業は、従来は与信審査に関連する書類を見ながら、審査用紙に必要事項を記入していくというものだった。そうした使い勝手をデジタル化した後でも維持できるようにすべく、1人当たり2台のディスプレイを机の上に並べるようにした。紙の持つ一覧性という長所をディスプレイの増設によって保ったことが、業務のペーパーレス化を円滑に促し、定着させることにつながった。