【ガリバーインターナショナル】
紙ベースの主要業務をiPadアプリで代替
ガリバーインターナショナルは、iPadを業務システムに大規模導入したことで注目されている。狙いの一つは、ペーパーレス化による低コスト化と業務の効率化である。
同社では、主要業務のほとんどに、何かしら紙が介在していた。以前からできるだけパソコンを使うようにしてペーパーレス化を進めようとしてきたものの、現場に近い業務では、使い勝手のよい紙を手放せずにいた。顧客の受付、営業員の支援、車両検査、車両画像の提供などの業務がそうだった。
これらの業務をパソコンだけで処理しようとすると、その携帯性や操作性、起動時間などが気になり、現場では使いやすい紙をつい使ってしまうことになる。つまり、紙を電子化するのは難しくはないが、紙より使い勝手の劣るパソコンがボトルネックとなり、ペーパーレス化を推進し切れなかったのだ。
この打開策がiPadだった。今では、「これらの業務のほとんどはペーパーレス化できると考えている」とガリパーインターナショナル 経営企画室の椛田泰行氏は明かす(図1)。
受付票の撤廃で、約1000万円のコスト削減
例えば顧客向けの受付票。従来は、自動車の購入あるいは買い取りを希望する顧客に、裏表1枚の用紙に手書きで記入してもらっていた(図2のa)。外の営業先では、営業員が携行した受付票の用紙に記入してもらい、営業所に戻ったときに商談3~4件ごとにまとめてパソコンからシステムに入力し直していた。
この受付票を専用のiPadアプリに置き換えることで紙をなくした(図2のb)。顧客にはiPadで直接アンケートフォームに打ち込んでもらう。
紙のコストの削減効果は、用紙の消費量が年間で約100万枚、1枚当たりのコストが4~5円なので年間約400万円に相当する。営業所への郵送コストを含めると年間約1000万円のコストを削減できる。
重要なのは、業務プロセス全体の効率化
もっとも、重要なのは、コストを減らすことだけではなく、現場の業務プロセス全体にとってメリットが得られることだ。iPadといえども、紙と比べるとまだまだ使い勝手が劣る面が多いことは否めない。それでもiPadを導入するのは、業務プロセス全体で見て効率化を図れるからだ。
例えば、車両検査のプロセスをiPadアプリとして実装した。従来は、検査項目が書かれたチェック用紙に検査員が手書きで記入していた。「車を見て書くという行為だけを見ると、紙のほうがはるかに楽だ。紙では1分でできていたことがiPadだと2~3分はかかってしまう」(椛田氏)。
ただし紙の場合、後工程でFAXを本部に送ったりパソコンに打ち込んだりといった手間がかかる。それを考えると、全体ではiPadを使ったほうが3分の1程度の時間短縮になるという。前述の受付票も含め「入力間違いや聞き間違いをなくして情報の精度を高めたり、売り上げをリアルタイムで把握したりというメリットも大きい」と椛田氏は説明する。