「パーソナルPM」とは、個人の活動にプロジェクトマネジメント(PM)を適用することです。「組織向けの手法を個人に適用できるのか?」「具体的に何をするのか?」「面倒ではないか?」「効果は一体あるのか」---次々に疑問が出てくるのではないでしょうか。

 そうした疑問に答えるため、パーソナルPMについて研究してきたプロフェッショナルがまとめた「一問一答」をお届けします。日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局の谷島宣之 編集委員が質問をぶつけ、プロジェクトマネジメント学会パーソナルPM研究会のメンバーが回答します(メンバー一覧はこちら)。

「パーソナルPM」という言葉は矛盾しているように見えます。PMには、火事場の火消し、難しい仕事をチーム全員で徹夜をしてなんとか収拾する、といった印象があります。それがパーソナルと何の関係があるのでしょうか。

冨永 「パーソナルプロジェクト」にPMを適用するという意味です。プロジェクトとは、期限のある1回限りの独自の仕事や活動ですので、組織だけではなく、個人にもたくさんあります。これをパーソナルプロジェクトと名付けましたが、個人プロジェクトと呼んでもよいかもしれません。

 PMの目的は、プロジェクトをうまくやり切って成果を出すことですから、個人プロジェクトにおいても大いに役立ちます。プロジェクトに火消しや徹夜が必要な事態も時にはありますが、それが常態ではありません。

竹久 そもそも火事を起こさないための知恵がPMであり、目標達成をより確実にする手法でもあります。個人にも色々な目標があるでしょうから、PMを活用する意味は大いにあります。

個人のプロジェクトとは、趣味などプライベートなものを指すのでしょうか。多趣味な人はともかく、一般にそれほど数は多くないのでは。

徳永 違います。パーソナルPMの対象は、単独(個人)で遂行するプロジェクトすべてです。領域としては、仕事、勉強、趣味、健康維持、家庭生活、人生まで大変幅広いです。そして個人のプロジェクトとはいえ、ステークホルダー(利害関係者)は複数人いる場合が多いです。

竹久 個人プロジェクトは数え上げたらきりがないほどたくさんあります。勉強で言えば、中学受験、高校受験、大学受験、資格取得、英語の上達。趣味で言えば、山登り、旅行、工作。スキーの検定、自動車や船舶の免許取得は趣味であり、勉強かもしれません。健康維持で言えば、禁煙、禁酒、ダイエット。人生で言えば、結婚、結婚披露宴、新婚旅行、就職活動もあります。

冨永 ルーチンワーク以外でやらないといけないことをToDoリストに書いたりします。組織の一員の仕事、その他の個人で受けた仕事、家の用事、個人の趣味など、そこに書かれるものは、目標、期限、独自性のあるものがほとんどですから、その多くが個人プロジェクトにあたるでしょう。

 例えば10人で担当している仕事のプロジェクトがあったとしますと、10人それぞれが何らかの仕事を分担しますから、その一つひとつは個人プロジェクトでもあります。ビジネスパーソンなら、仕事の個人プロジェクトのほうが多いでしょう。