2001年の発行以来「10年後も通用する基本を身につけよう」のキャッチフレーズのもと読み継がれてきた書籍「なぜ」シリーズ。この先の10年に向けて、何をいま知っておくことが重要なのかを著者の皆さんに語ってもらいます。(編集部)

 『ネットワークはなぜつながるのか』の第1版を出版したのは2002年でしたが、もし、その10年前、つまり1990年代の初め頃に出版していたらどうなっていたでしょう?その本は10年後には通用しないものになっていたはずです。その理由は簡単です。90年代はネットワークにとって大変革の時代で、10年間ですべてが変わってしまったからです。

 90年代初めのネットワークは、回線交換という技術で骨格が形成されていました。この技術は今でも家庭の固定電話などで残っていますが、今のネットワークとは根本が異なる旧式のものです。つまり、今のネットワークとは根本が異なっていたわけです。

 では、今のネットワーク技術のベースになっているパケット交換が当時どういう状況だったかというと、一部の先進企業が実験的に導入し始めていましたが、それは世の中のほんの一部に過ぎない状況でした。今では当たり前になっている社内LANは、当時のほとんどの会社には存在せず、インターネットはその存在すら知られていませんでした。そのため、コンピュータのメーカーが違うだけでつなぐのに苦労しましたし、インターネットで世界中がつながるなんて夢物語でした。今とはまったく異なるネットワーク環境だったわけです。

 それが10年後の2000年頃には今と同じようなネットワーク環境ができあがっていました。10年間でほとんどすべてのものが変わってしまったわけです。コンピュータの世界だったら、プロセッサの基本方式であるノイマン型が別の方式に置き換わるような変化があったということです。これでは、90年初頭に出版した本が10年後に通用するはずはありません。