今回は、話し言葉でよく使ってしまう表現「~ないこともない」「~ないとも限らない」といった二重否定を取り上げます。これを文章で用いると、話し言葉の場合と同様に意味が曖昧になり、誤解のもとになってしまいます。
どこが問題?
- その条件でその価格なら、譲歩しないこともない。
- それなら、まだ刷り直しできないこともない。
- メンバーに彼が入るなら、課長も参加しないこともない。
ここが問題!二重否定を使っているので文意が曖昧になる
否定を否定することによって、「消極的な肯定」の意味になります。はっきりした言い方がしにくい場合に、このような表現を用いてしまいます。曖昧な表現を好む、日本の文化特性が原因にあると考えられます。
これで解決!二重否定は肯定表現に変える
「~ないこともない」などの二重否定表現は、「~だろう」「~かもしれない」などの肯定表現に変えましょう。
変わった!
- その条件でその価格なら、譲歩しないこともない。
→その条件でその価格なら、譲歩するだろう。 - それなら、まだ刷り直しできないこともない。
→それなら、まだ刷り直しできるだろう。 - メンバーに彼が入るなら、課長も参加しないこともない。
→メンバーに彼が入るなら、課長も参加するだろう。
文章のテクニックとしては、非常に簡単なものです。しかし、意識しないと口語と同様につい使ってしまうのが、二重否定です。自然に二重否定→肯定表現と変換できるように練習しておくとよいでしょう。では、いくつか練習しましょう。
練習
- アポイントがキャンセルにならないとも限らない。
- その評価は悪くないこともない。
- 締め切りに間に合わないこともない。
練習解答
- アポイントがキャンセルになるかもしれない。
- その評価は結構良い。
- 締め切りに間に合うだろう。
二重否定表現と肯定表現、両者を読み比べてみるとお気づきになると思いますが、後者のほうが一読して文意が読み取れます。つまり、ビジネス文書に適しているということです。ほんの少しの意識の違いがわかりやすい文書を生み出すのです。
パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役

法人向けの研修を企画・実施するパンネーションズ・コンサルティング・グループの代表取締役。ロジカル・ライティング、ロジカル・コミュニケーション、交渉などの領域で、自ら講師としても活躍。2008年より早稲田大学理工学術院非常勤講師。著書に「誰でも論理的に書ける ロジカル・ライティング」、「なるほどナットク!ビジネス文書の達人になるためのQ&A41」など。