関西ブロードバンドやソフトバンクBBなどのDSL事業者は2011年3月7日、「DSL事業者協議会」を設立すると発表した。DSL事業者約30社の参加を見込んでいる。

 協議会ではDSL事業者間の情報交換や交流のほか、低廉な光サービス提供を実現するための施策や、総務省の「光の道」構想が目指すブロードバンド利用率100%の達成に向けた施策について参加事業者らの意見を集約し、提言を行う。協議会が目指す今後の方向性については、「引き続きDSL事業者として確固たる地位を築いていくことが根底にあるが、多種多様なユーザー目線からFTTHも併用していかなければならない」(発起人会の代表を務める関西ブロードバンドの三須久代表取締役社長)と答え、必ずしもDSL業態の継続にこだわらない考えを示した。また、当面の具体的な活動テーマについては「NTT東西地域会社の加入者光ファイバーの1分岐貸しが重要な活動目標となる」(新潟通信サービスの本間誠治 代表取締役)と答えた。

 このほか協議会では事業者間の部材などの共同購入や、「制度」「地域のICT利活用推進」などのテーマごとに専門部会を設けて議論を行う予定である。また技術的な実証実験の実施なども検討しているという。

地方の光ビジネスには1分岐貸しが不可欠と主張

 今回「DSL事業者協議会」の設立を共同で発表したのは、関西ブロードバンドとソフトバンクBBのほか、新潟通信サービス、エム.ビー.エス、沖縄テレメッセージ、彩ネット、サイプレス、長野県協同電算、マイメディアの計9社である。このうち約350万件のユーザーを抱えるソフトバンクBBを除く8社は地方でサービス提供する事業者で、この8社合計でもユーザー数は2、3万件という。

 地方に特化してサービス提供する事業者は、1分岐単位でFTTHを借りられないとビジネスが成り立たない理由が地方にはあると説明する。現在NTT東西は、40~50世帯程度を一つの単位とする「配線ブロック」を設定し、この配線ブロックごとにシェアドアクセス型の加入者光ファイバー回線を8分岐単位で貸し出している。この方法で人口密度の低い地方にFTTHサービスを今後展開した場合、「一つの配線ブロックに含まれる世帯数が1桁になることが考えられる」(マイメディア インターネット事業部の横田洋人事業部長)という。その場合、まずNTT東西の回線として8分岐があるところに、さらにほかの事業者が8分岐を借りて提供すると、もともと1桁の世帯しかいない配線ブロックに2事業者が計16回線を提供することになる。「これでは未利用回線が多くなり、ビジネスが成立しない」と指摘する。

 またNTT東西がFTTHサービスの未提供エリアの住人に対して事前にFTTHサービスの利用希望を募り、希望者がある程度まとまった時点でサービス提供を行っている点も問題視する。「他事業者はその地域のネット利用に積極的なユーザーをまとめてNTT東西に持って行かれた後に参入せざるを得ず、そこで8分岐単位で回線を借りても採算が取れるだけの利用者を集めるのが難しい」(新潟通信サービスの本間代表取締役)という。

不採算地域は別の議論、とNTT

 こうした主張に対してNTTは「いずれも地方で1分岐貸しが必要という根拠にはならない」(NTT東日本 広報)と反論した。今後地方で一つの配線ブロックに含まれる世帯数が少なくなることがあるのは事実だが、「1桁まで減るような地域はそもそも不採算地域であり、通常の提供方法ではなくIRU方式や無線を使ってサービス提供する方法が有力となる。IRU方式では入札によって公正な形で運営事業者が決められている」という。無線によるブロードバンドサービス提供の場合は、加入者光ファイバー回線の8分岐単位の貸し出しという前提そのものが無くなる。

 また事前の調査の関連については、NTT東西では新規にサービス展開するエリアについて「サービス提供の方針を決めた時点でエリア展開の情報は随時公開している」とし、「他事業者もNTT東西と同じタイミングで営業を開始でき、競争条件に差はない」という。事前に利用希望を調査するのはそこでサービス提供をして採算が取れるかを判断するためで、実際に加入者を募集するのはエリア展開の情報を公開した後となる。そのため、NTT東西が利用者を先取りしているわけではないと説明した。