写真6●太陽生命の大連オフィス<br>インフォデリバのセンター内に設けされたBPOセンターである。
写真6●太陽生命の大連オフィス
インフォデリバのセンター内に設けされたBPOセンターである。

 日本流の品質改善策の最たる例が、毎朝の朝礼だ。朝8時30分、決まったセキュリティーカードを持つ者しか入室できない作業室には「おはようございます」との声が響く。ここはインフォデリバのセンター内に設けられた、太陽生命 大連BPOセンターである(写真6)。

 オペレーターたちが着席するとすぐに五つの質問からなる小テストが始まる。さらに週1日は50問のテストも続く。テスト内容は医学用語の読み書きだ。出勤中の23人のオペレーター全員で答案を読み上げながら答え合わせをして、最後にテスト内容を全員で復唱する。取材日は二つのテストがあり、ほぼ全員が満点だった。BPOルームの壁一面には、難読文字が所狭しと掲出されている。

 テスト後は前日に読み間違えた医学用語の復習である。なぜ間違えたのか、その言葉がどんな意味なのかをリーダーが10分間、丁寧に説明する。オペレーターたちは私語一つせず熱心に聞き入る。

 9時、最初の診断書のイメージデータが日本から送られてくる。診断書は個人情報を特定できないように四つのエリアにばらばらにされている。オペレータたちはすぐさま入力に取り掛かり、42枚の診断書を10分間もたたないうちにすべて文字データとして入力。入力作業を終えるとすぐに他のオペレータが入力した結果を目視でチェックする。さらにもう一度別のオペレーターが目視でチェックし、最後にその日の品質責任者を任命された上級者が3回目の目視チェックを実施して誤りを排除する。

写真7●チームメンバーへのアドバイス回数を個人ごとに星印でカウントしたグラフ
写真7●チームメンバーへのアドバイス回数を個人ごとに星印でカウントしたグラフ

 それまでキーボードの打鍵音しか響かなかった作業室は、チェック作業ではやや騒がしくなる。読み方がわからないもの、読みにくいものを相互に教えあうためだ。作業室の壁には個人個人が何回アドバイスしたかがわかるグラフも張ってある。チェックが終わったオペレータたちは休憩時間前の9時55分まで、日本語の教科書やこれまでのテスト結果、日本語で書かれた初歩的な医学書を読んで自習を続けていた(写真7))。

 太陽生命向けBPOでは午前9時から午後5時までの8時間を5分割して業務に臨む。処理ペースはオペレーター全員で1日平均850枚、毎週月曜日のピークには1300枚超の判読・データ入力を実施する。作業日は日本のカレンダーに合わせ、春節も出勤する。

 オペレーターは全員、20日間の新人研修を受けた経験を持つ。研修で、専門用語の読み書きと体や臓器の名称、病名などをたたき込まれる。それらを日々の朝礼で復習し、さらに2カ月に一度は実力テストを受け、過去の入力ミスを重点的に復習する(図4)。「こうした改善を積み重ねれば、新人でも3カ月で一人前になる」(細川執行役員)。

図4●太陽生命保険のデータ入力業務を担うインフォデリバの拠点における従業員訓練の流れ
図4●太陽生命保険のデータ入力業務を担うインフォデリバの拠点における従業員訓練の流れ
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