目の前の現実を認めない「否認」が破滅的な状況を引き起こした複数の実例を詳説するのが本書である。著者は、ビジネスの世界で「状況が実態より良いようなフリをすることは、最終的にはほぼ確実に破滅につながる」と結論付ける。
一例が1999年に米フォードがサウジアラビアで起こしたブリヂストン・ファイアストン(現・ブリヂストン アメリカス)製タイヤのリコール問題だ。フォードの経営者は自らの行為をリコールとは呼ばず、「お客様への告知強化策」との言葉を使い、責任を回避しようとした。否認が組織の衰退につながるという指摘は、八百長問題に揺れる日本相撲協会など、日本の様々な組織にも当てはまりそうだ。
なぜリーダーは「失敗」を認められないのか
リチャード・S・テドロー著
土方 奈美訳
日本経済新聞出版社発行
2100円(税込)