有限責任 あずさ監査法人
パートナー 公認会計士
和久 友子

 我が国において、2010年3月期から有価証券報告書における連結財務諸表に対してIFRS(国際会計基準)の任意適用が認められることとなった。2010年3月期には1社が国内で初めて、有価証券報告書や株主総会招集通知において、IFRSに基づく連結財務諸表の開示を行った。続いて2社が2011年3月期より、もう1社が2012年3月期の第1四半期よりIFRSの任意適用を開始すると公表している(東京証券取引所「IFRS早期適用・早期適用予定会社一覧」参照)。

 このように、IFRSの任意適用企業は依然まばらといった状況であるが、IFRSの強制適用を見据えて準備を進める企業が増えつつあることは確かであろう。東京証券取引所が東証全上場会社を対象に実施したアンケート調査(「IFRS準備状況に関する調査結果」、2010年11月公表)によれば、任意適用に向けた準備を進めている企業は97社と増加傾向にある(2009年調査では56社)。また、2015年から2016年3月期以降の強制適用を見越して準備を進めている企業は1059社(67.4%)にのぼる。

 本連載では、IFRS導入を進めるプロジェクトチームや関連部署で必要となる具体的な検討項目のイメージをつかんでいただくために、主要な業種別にIFRS導入の留意点からIFRSによるインパクト全般までを見ていく。取り上げる業種は、小売、食品、商社、テレコム、自動車などの組立型製造、医薬品、不動産、金融の8業種を予定している。

 それぞれの回ごとに、すべての業種に共通する事項と業種固有の事項を明らかにしながら、IFRSの策定主体であるIASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)が進めている共同プロジェクト(MoUプロジェクト)の動向を含め、IFRS導入における会計処理上の論点を解説していく。

 今回は総論として、IFRS導入のメリットとプロジェクトの進め方を改めて紹介したい。すでにご存じの方も多いかもしれないが、知識の整理や確認のために役立てていただければと思う。