今回はスマートグリッド情報ネットワークモデルのオペレーション要素について述べる予定だったが、現在問題になっている計画停電がオペレーションの要素で取り扱う事項なので、予定を変更し、計画停電とスマートグリッドについて述べる。

 計画停電は強制的な節電であり、広範な活動に多大な影響を及ぼす。しかし、計画停電を行わずに需要が供給を超えるような事態が発生すれば、電力網が不安定になり、連鎖的に発電所が停止したり電力網内の装置や機器が破損したりする可能性がある。そのような事態が発生すれば、破損や故障の程度にもよるだろうが、復旧には数日どころか、数週間から数カ月を要する可能性がある。需要と供給のバランスは何としても維持しなければならないのだ。

 計画停電を回避するには2つの方向がある。消費量を抑えることと、発電量を増やすことだ。すぐ実行できる方法として現在節電が広く呼びかけられており、また休止中の発電所を早期に再稼働させるなど、発電量を増加させる努力も並行して行なわれている。しかし、本格的な電力供給の回復にはかなりの時間がかかることが予想される。中長期的にはさまざまな手を打つ必要がある。その一つとして、スマートグリッドの導入が今後の電力の安定供給に役立つのではないかと考える。

年間の停電は数分程度だった

 そもそも米国でスマートグリッドが注目されるようになった背景に、慢性的な電力不足がある。これは様々なことが積み重なった結果だ。例えば、電力網を構成する機器や部品が老朽化により故障して停電を引き起こす、新しい技術を実装しなかったため臨機応変に電力を振り分けられない、発電所や送電網の建設や増設を行ってこなかった、設備間の相互運用性がないなどにより、年間数時間の停電が起きている。専門家の中には、スマートグリッドは電力不足解消のための切り札だという人もいる。

 それに対し、日本では電力不足の問題はほとんど起きてこなかった。東日本大震災の前に東京電力を含め日本の電力会社を取材したところ、電力会社は十分な発電能力を持ちインフラもしっかりしているので、年間の停電は数分程度に抑えられているということだった。日本におけるスマートグリッドは低炭素化社会の達成を一番の目標に掲げており、具体的には家庭の屋根に設置する太陽光発電と電気自動車に特化している。そうした状況から、米国型のスマートグリッドはそのまま日本に適用されることはないと考えていた。