ブログサービスなどを提供するサイバーエージェントは2011年3月、データセンター(DC)内にあるサーバーやストレージの電源を遠隔から集中管理するシステムを構築した。

 コンセントごとに電源を遠隔からオン/オフしたり、消費電力を細かくリアルタイムに把握したりできるようにした。これらの機能を使うことで、電力の容量オーバーによる障害を防止したり、ラックスペースを効率的に利用したりできるようになる。

 電源管理システムの中核は、遠隔操作機能や通信機能を備えた200台のインテリジェントPDU(電源分配ユニット)だ。同社はラリタン・ジャパンの「Dominion PX」を採用した。これとオープンソースの運用管理ツールを組み合わせて使う。

図●サイバーエージェントが構築した電源管理システムの概要
図●サイバーエージェントが構築した電源管理システムの概要
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 サイバーエージェントが特に期待している効果は、電力消費量の実測値を基に、サーバーの配置を決められることだ。「電源管理システムを利用することで、トラブルなど不測の事態を防げるようになる」と、アメーバ事業本部コアテクノロジーグループの怡土研也氏は強調する。

 新しいサーバーを追加導入する際、従来はカタログスペックを基に電力消費量などを試算して配置を決めていた。ところが、サーバーの起動時などに想定より多くの電力を消費することがあり、ブレーカーが作動してシステムがダウンすることがあったという。

 同社が電源管理システムの構築を急いだ理由の一つに、2009年末に遭遇した電源トラブルがある。DCの電力容量が許容量をオーバーしたため、Webサーバーの約半分がダウンしたのだ。システムを冗長化していたため、サービスそのものが止まる状況には陥らなかったが、「サーバーが増え続ける状況で、早急に対策を練る必要があった」(怡土氏)。

 商用DCの多くは、インテリジェントPDUによる電源管理サービスを提供している。サイバーエージェントは当初、DCのサービスの利用しようとしたが、「値段の折り合いが付かなかった」(怡土氏)。ラック100台で年間1000万円程度かかるからだ。自社で電源管理システムを構築したところ約3000万円で済んだ。

 折しも東日本大震災により、企業は節電を迫られている。そうした目的でも電源管理システムは役立ちそうだ。