経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、ビジネスやアプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。ノベルが主張する「IT基盤のあるべき姿」に続き、今回は、その実現に向けてノベルが重要視しているテクノロジーを紹介する。(ITpro)

 「ノベルが考える「次世代IT基盤のあるべき姿」では、IWM(インテリジェント・ワークロード・マネジメント)市場においてノベルが独自に展開しているアプローチである「Workload IQ」のビジョンについて紹介した。

 Workload IQでは、物理環境、仮想環境、クラウド環境のいずれの環境においてもポータブルであり、ワークロードの安全でシンプルな管理を実現する包括的で一貫したポートフォリオの提供を目指している。

 今回は、Workload IQを実現するライフサイクルである、「Build(構築)フェーズ」「Secure(セキュリティ)フェーズ」「Manage(管理)フェーズ」「Measure(評価)フェーズ」のそれぞれについて、どんなテクノロジーにより具現化していくかについて紹介する。

ワークロードをセキュアかつ効率的に構築

 Workload IQが目指す世界は、“ワークロード”を物理環境、仮想環境、クラウド環境に関わらず、インテリジェントに管理することだ(図1)。ワークロードとは、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウエア、アプリケーションで構成される「ビジネスサービスを実行するための統合されたスタック」である。

図1●ノベルの「WorkloadIQ」が対象にするライフサイクル
図1●ノベルの「WorkloadIQ」が対象にするライフサイクル
[画像のクリックで拡大表示]

【Build(構築)フェーズ】
 ワークロードは、なるべく小さく、使いやすい構成で構築され、物理環境、仮想環境、クラウド環境において、完全にポータブルであるということが重要になる。Buildフェーズでは、Workload IQを構成する最小単位であるワークロードをいかに効率的に構築できるかが最大のポイントになる。

 ワークロードの構築フェーズにおいて、ベースになるOSが「SUSE Linux」だ。もちろんWindows OSなど、ほかのOSを利用してワークロードを構築することも可能だ。しかしSUSE Linuxを使用することで、物理環境向けのワークロードを構築できるだけでなく、仮想環境やクラウド環境にも適用可能な「バーチャルアプライアンス」を構築できる。

 バーチャルアプライアンスとは、仮想サーバー上で動作させることができる特定用途のソフトウエアのことだ。OSやミドルウエア、アプリケーションなどが、あらかじめ設定された状態で提供され、仮想サーバー上で稼働する。仮想環境やクラウド環境を、短期間かつ容易に構築できるようになる。

 バーチャルアプライアンスの構築では、「SUSE Linux Enterprise Server」によるフル機能のバーチャルアプライアンス構築のほか、「SUSE Linux Enterprise Desktop」や「SUSE Linux Enterprise Just enough OS(JeOS)」をベースに、よりフットプリントが小さいバーチャルアプライアンスも構築できる。

 JeOSをベースとした最小構成のバーチャルアプライアンスを構築すれば、必要なリソースを最小限にした、より効率的な仮想環境やクラウド環境を実現できる。不必要な機能やソフトウエアを搭載しないことで、セキュリティ上のリスクも軽減できる。

 バーチャルアプライアンスの構築においては、SUSE Appliance Toolkitが持つ「SUSE Studio」を使えば、マウス操作だけで環境を設定・変更できる。Amazon EC2など、主要なクラウド形式をサポートしたバーチャルアプライアンスの構築作業の簡素化につながる。

【Secure(セキュリティ)フェーズ】
 ここでは、「Novell Identity Manager」によるアイデンティティ管理や、「Novell Access Manager」によるアクセス管理といったセキュリティ製品群と組み合わせることで、物理環境から仮想環境、クラウド環境までの統合的な認証が可能になる。

 クラウド事業者に向けたセキュリティサービスに「Novell Cloud Security Service」といったテクノロジーがある(詳細は後述)。