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 Internet Explorer(IE)には、大きく2つの問題がある。一つはIE6の問題。もう一つはWindows XPの問題だ。

IE6の問題

 IE6の問題はシンプルだがやっかいだ。IE6は、ちょうど10年前の2001年4月にリリースされた旧世代の製品。マイクロソフトによるサポートは継続しているものの、同社自身がセキュリティ機能などを問題視している。

 2010年5月に豪マイクロソフトはIE6を「spoilt milk(腐った牛乳)」と表現して、IE8への乗り換えキャンペーンを実施した。2011年3月には、米マイクロソフトが「The Internet Explorer 6 Countdown」というWebサイトを開設し、IE6の使用停止を呼び掛けている(関連記事)。同ブラウザーのシェアを1%未満にするのが目標だ。

 驚くべきことに、米Net Applicationsの調査によれば、IE6のブラウザーシェアはリリースから10年経った今でも10%を超えている。これは次期版であるIE7よりも高い。国によってシェアはだいぶ異なっており、前述のマイクロソフトのWebサイトを見ると、米国などはシェアが低く2.9%。逆に高いのが中国で34.5%もある。日本におけるIE6のシェアは10.3%で、ほぼ世界の平均と同じである。

 最新版にアップデートする手間だけであれば、何回かのクリックと、何分かの時間があれば済む。やっかいなのは、それだけで済まない事情があることだ。

 ある現場の開発者は次のように指摘する。「IE6で稼働している業務アプリケーションがたくさんある。バージョンアップしたらそれらが動かなくなる可能性があるから、塩漬けにせざるを得ないのだ」。同じHTML4.01をベースにしたブラウザーであっても、種類ごと、バージョンごとに挙動は異なる。挙動というのは単に表示の崩れだけではない。ActiveXコントロールを組み込んでユーザーインタフェースを作り込んだWebシステムなどは、ブラウザーへの依存度が高まるため、アプリケーションを作り直さないと、ブラウザーもバージョンアップできないという事態に陥ってしまう。

 IE6の存在はセキュリティの問題だけでなく、Webサイトの運用担当者などにも負担を強いている。IE6でもIE7/8あるいはFirefoxなどと同じように動作・表示させようとすると、挙動の違いが発生するたびにコードを微調整する必要があるからだ。問題があるとされているブラウザーに対処する仕事は、エンジニアとしてもモチベーションの上がるものではない。

 この問題にはタイムリミットがある。IE6は2014年4月を持ってサポート期限が終了する。セキュリティやコンプライアンスの観点からすれば、その日以降にIE6を使い続ける選択肢はあり得ない。つまり、その日までにブラウザーのバージョンアップだけでなく、Webシステムのリプレースを終わらせておく必要がある。基幹系にかかわる業務アプリケーションであれば、企画から開発・テストまで数カ月、場合によっては年単位かかることも珍しくないため、あまりのんびりとは構えていられない。

 IE6を対応ブラウザーから外す動きは、既に始まっている。グーグルは1年前の2010年3月にサポートを終了した。Yahoo!JAPANも同年12月にサポートを終了している。