Internet Explorer(IE)9、Firefox(FF)4と最もメジャーなWebブラウザーがこの3月、相次ぎバージョンアップした(注1)。いずれもウリは、軽量化・高速化および「HTML5」をはじめとする次世代Web技術への対応である。米マイクロソフトはそのすごさをアピールするために、Internet Explorer Test DriveというWebサイト上でIE9に最適化した次世代のWebサイトをデモしている。それらを眺め、操作してみると、なるほど、これからのWebサイトとはこういうふうになるのかというのがよく分かる。

注1 IE9のリリースは3月15日。ただし日本語版については、東日本大震災の影響により延期されており、3月末時点で正式にはリリースされていない。日本語版以外については予定通り提供されている。

 現在のWebサイトの大半は、業界標準として使われている「HTML4.01」および「CSS2.1」をベースに制作されている。HTML4.01の規格がW3C(World Wide Web Consortium)で策定されたのは1999年のこと。CSS2は1998年に勧告され、その後、マイナーバージョンアップとなる2.1の勧告候補が公開されている。レガシーマイグレーションによってメインフレームからWebシステムに移行した業務アプリケーション、企業の広告や販売に欠かせなくなったB2BやB2CのECサイト、盛り上がりつつあるSaaSなど、この10年間に作られたWebシステムは、これらを利用して開発されている。HTML/CSSは10年以上にわたって使われ続けてきた“枯れた技術”なのである。

 IE9およびFF4のリリースは、HTML4からHTML5(注2)への移行を加速するだろう。米Net Applicationsの調査によれば、IEとFFを合わせると2011年3月時点で全ブラウザーの4分の3のシェアを占める。そのためWebサイトや業務アプリケーションは、IEとFFをクライアントの動作環境として推奨していることが多い。両ブラウザーがHTML5対応となれば、クライアントの作り方を根本から見直す契機になる。その意味で、この春は情報システムのアーキテクチャーの、10年ぶりのターニングポイントなのだ。

注2 W3Cで策定中の仕様が狭義の意味でのHTML5だが、CSS3、JavaScript API、SVGなど様々な次世代Web技術の総称としてHTML5という言葉が使われることも多い。ここから先は後者の意味でHTML5という言葉を使う。