◆今回の注目NEWS◆

東日本大震災 世界最大級、沿岸に大津波(asahi.com、3月12日)

【ニュースの概要】 3月11日午後2時46分ごろ、三陸沖を震源とする大地震が発生。宮城県栗原市で震度7を観測したほか、東日本の太平洋沿岸が大津波に見舞われ、多数の死者・行方不明者が出た。地震の規模を示すマグニチュードは9.0(当初発表は8.8)で、記録が残る1923年以降国内で最大。2010年2月のチリ大地震を超える世界最大級の地震になった。


◆このNEWSのツボ◆

 東北地方太平洋沖地震およびそれに続く津波、さらには原発事故で被害に遭われた皆様、あるいは避難を余儀なくされている皆様には、心からお見舞いを申し上げますとともに、被災地の復興が一日も早く進むことを心から願っております。

 今回の東日本大震災の被害と影響は、日々広がりつつあり、正直に申し上げて私自身、この大災害に対して、何かまとまったことを書き記せる心境にはない。原発の問題は依然として落ち着く目途も立っていない。ただ、今回の大震災が自然災害と人工の災害の複合災害であり、日本の記録に残る中では最悪・最大と言って過言ではない。

 この大震災の中、良い意味でも、また、悪い意味でも「インターネット」の威力が改めて注目された。インターネットは、もともと米国で軍事用に開発された技術で、通常の通信網が寸断されたり、満杯になってしまったりしたような場合であっても、「つながっている通信経路を探して」、「空いている時間に」、情報を送受信できるという強みがある。

 今回も、従来のどのような通信手段よりもインターネットの立ち上がりが早かった。多くの通信会社が「災害伝言板」を作って被災者の安否を伝え、確認できる仕組みを作ったことで、親族の状況を知ることができた人々は多かっただろうし、私が所属する会社でも、被災した東北地方の機能回復のための連絡は、当初はほとんど電子メールであった。

 また、今回被災地への義援金が阪神淡路大震災の時と比べて著しく早く、しかも多額に集まっていると聞く。これは、多くの通信会社やポータル運営会社、e-コマースやネットゲームを運営する会社などが「クリック」で募金できる、インターネット募金の仕組みをいち早く構築したことと無縁ではないだろう。

 他方、SNSなど各種のソーシャルメディアの発達によって、流言飛語に近い情報が、日本のみならず世界中に発信されたりして、大きな情報の混乱を招いたことも事実である。「放射能を大量に含んだ雨が降る」「次の地震が○○で起こる」といった情報がツイッター上を飛び交ったり、「有害物質を含んだ雨が降る」といったチェーンメールが流される、あるいは、義援金を詐取するようなサイトが作られるといった状況は今も続いている。

 海外からは、「日本からの情報発信が少なく、原発問題が不安」という批判が寄せられた。国内を対象にしたテレビ報道や、新聞を入手できない海外からは、インターネット経由の情報が最も入手しやすいものとなる。ネット上でマイナス影響の強いウワサや流言が多いことと、海外のネガティブな反応とは無縁ではないだろう。

 中東での民主化運動などでも注目されていたが、今回の震災でインターネットが有事の際に強いツールであることが改めて明らかになった。他方、政府(首相官邸)あるいは東京電力などが、こうした「怒濤(どとう)」「暴力的」とも言えるほどあふれかえるネット上の情報に対して有効な情報発信ができていたかというと、残念ながら、そうとは言えない。

 もちろん、この大混乱の中で、今からこうした問題に取り組むと言っても無理があるだろう。それよりも優先されるべき課題があることは間違いない。ただ、原発事故、停電、物資不足や食糧の汚染状況などに関して、あちこちの政府機関のページを見て回らなければ、なかなか情報が得られないことも事実である。「ネットは有事に強力なツールである」という前提のもと、今回の経験を今後の有事対応に活かしていく取り組みが忘れられるべきではないだろう。

安延 申(やすのべ・しん)
フューチャーアーキテクト 取締役 事業提携担当,
スタンフォード日本センター理事
安延申

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後,コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト取締役 事業提携担当,スタンフォード日本センター理事など,政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。