北 教之/TELEHOUSEアメリカ

 2010年4月にニューヨークに赴任して、まず驚いたのがマンハッタンというエリアの狭さ。東西の幅は約4キロ、南北は20キロ足らずで、車よりも徒歩が移動手段として主流になっている。結果としてマンハッタンでは、歩行者の数が多い。

 「街に歩行者がいるのは当たり前だろう」と思われるかもしれないが、マンハッタンの対岸にあるニュージャージーではそうではない。移動手段はほとんど車であり、道を歩いていると、走っている車が急停車して「どうした、車が壊れたか?」と声をかけられる、なんて話もある。

 とにかく土地が広く、車が主たる移動手段の米国において、多くの人たちに「徒歩で」出会えるマンハッタンの狭さは極めて特殊だ。世界中から様々な人種が集い、情報を直接交換する結節点。マンハッタンは世界につながる「出島」なのだ。

 土地の狭さは通信事業者にとっては大きな利点でもある。光ケーブルなど大容量通信インフラは充実している。このためマンハッタンには多くのデータセンターが集中し、ネットワークの相互接続点となっている。

 ただ最近は、集中傾向に変化が生じている。サーバー集積型で大きな電力を消費するデータセンターが次々と、マンハッタンに隣接するニュージャージーやロングアイランドなど郊外に建設され始めたのである。例えばニューヨーク証券取引所も、ニュージャージー北部に大規模なデータセンターを構築した。背景にあるのは、911テロ以降のリスク分散志向や、データセンターにとっては特に重要な意味を持つ安い電気料金だ。

 とはいえ、マンハッタンの求心力も失われてはいない。何かあればすぐ徒歩で駆けつけられる利便性は、IT担当者にとって捨てがたい魅力である。

流行の中心地に新データセンター

 こうした中でTELEHOUSEアメリカは、マンハッタン島内に2カ所とマンハッタン島の南に位置するスタッテン島に1カ所、計3拠点のデータセンターを持ち、都市部と郊外の両方のメリットが享受できる環境を整えている。

 そのうちの一つは2011年1月に開設したばかりの最新鋭データセンターで、マンハッタンで最もトレンディーとされる再開発エリアのチェルシー地区にある。

 昼食時には、貨物列車の廃線を改装した「ハイライン」というすぐ近くの公園で、テイクアウトのランチを楽しめる。仕事帰りなら、古い工場の内装を生かしたレトロな雰囲気のチェルシーマーケットで買い物をし、日本食レストランでデート、というのもおしゃれだろう。交通手段は、もちろんニューヨーク名物の地下鉄と、「徒歩」がお勧めだ。

北 教之(きた のりゆき)
TELEHOUSEアメリカ副社長。KDDIで国際データ通信業務を担当、2010年4月にTELEHOUSE米国に赴任。米国でのデータセンター事業展開を担当。合唱が趣味で、年末にはマンハッタンの教会で第九の合唱に参加。教会で歌うコーラスは本当に心地よい。