電気を供給する際には、電気そのものとそれに付随する情報をプレミスと交換する必要がある。分かりやすい例としては、電気使用とそれに伴う使用量データがある。電力会社は一般企業に比べて公益性が高いとはいえ、電力を提供してその見返りに代金を徴収することでビジネスを展開している。信頼性の高い電力の安定供給と並んで、正確な使用情報の収集と課金もまた重要だ。

図1●サービスプロバイダー要素とそのコンポーネント
図1●サービスプロバイダー要素とそのコンポーネント
出典:国立標準技術研究所(NIST)

 サービスプロバイダーはカスタマーと直接やり取りする立場にいて、カスタマーから依頼や苦情を受け取る。カスタマーの実態や要望、不満などを直接把握できるため、こうした情報を将来の発電設備の充実など、電力業務に反映させられるという利点がある。半面、数多くのカスタマーへのサービス提供は必ずしも容易なことではない。

 図1に、サービスプロバイダー要素とその構成コンポーネントを示した。それぞれのコンポーネントについて見ていこう。

電力会社

 もともと米国では日本と同じように電力業界は垂直型に構成されており、発電、送配電から課金、その他のサービスまで、すべて電力会社が1社で行なっていた。筆者の住む北カリフォルニアではPG&E社が電力とガスの供給を行っているが、PG&Eをはじめとしてカリフォルニア州の電力供給システムは今でも垂直型である。

サードパーティー

 カリフォルニア州と異なり、テキサス州やその他いくつかの州では、電力供給システムのすべての機能を一つの電力会社が提供する垂直型から、各機能を異なった会社が担当する水平型に移行している。発電したり送配電のサービスを提供したりしていない企業でも、電力の小売りやそれに付随するサービス(課金、収金など)を提供することはできる。大規模かつ高額なインフラを設置する必要がないので、このビジネスへの参入は比較的容易だ。

 サービスを提供して定期的に課金するという仕組みでビジネスを行なっている会社には、ケーブルテレビ、インターネットプロバイダー、クレジットカード会社、水道会社、ごみ収集事業者(米国では私企業が月間使用料を取ってごみ収集事業を行っている)、車のリース会社、住宅ローンを含むローン会社などがある。これらのうち、クレジットカード会社や水道会社、ごみ収集事業者がすぐに電力ビジネスに参入するとは考えにくいが、ケーブルテレビ、電話会社、インターネットプロバイダーなどは技術的にもインフラ的にも似ているため、電力供給に付随するサービスの提供という分野に参入する障壁は低い。

 北カリフォルニアではケーブル会社のComcastとAT&Tの2社が、電話、テレビ、インターネット・アクセス・サービスという3分野でしのぎを削っている。競争に勝つために新たなサービスを提供することも十分に考えられる。課金してそれを回収するという機能は業種が異なっても共通であり、こうした会社はそのノウハウを既に持っているためだ。

リテール・エネルギー・プロバイダー

 電力供給システムが垂直型でないテキサス州などでは、発電を行なう電力会社と、家庭や商業施設に電力を供給する会社が異なるところもある。

CIS(カスタマー情報システム)

 CIS(カスタマー情報システム)は、カスタマーをサポートする際に必要な情報を提供するシステムだ。具体的には、カスタマーの連絡先情報(住所、電話番号、メールアドレス、顧客番号)、カスタマーに提供できるサービスの種類と現在選択されているサービス、電力消費量情報、停電時の問い合わせやサービスのリクエストなどの有無とその内容、要求・応答への協力状況や削減できる電力量、節電対策に利用できる情報、電力会社のオンラインサービスのIDやパスワード、支払い方法(郵送、自動引き落とし、クレジットカードなど)がCISで提供される。