今回はストレージ関連のトピックを総ざらいして、情報急増に耐え得るストレージシステムの全体像を4つの観点から検討する。

 前々回の第8回 大量データを守る適切な災害対策で「今日ではデータは企業の無形資産である」と述べた。実際、意思決定においてデータは重要な役割を果たす。だからこそストレージは非常に重要だ。

 今回はこれまでの連載内容を振り返りつつ、情報急増に耐え得るストレージシステムの全体像を検討する。ストレージの要件で大切なものは「可用性」「性能」「容量」「保全性」の4つである()。

図●ストレージの基本要件(抜粋)
図●ストレージの基本要件(抜粋)
出所:伊藤忠テクノソリューションズ

可用性を高めるには、ストレージを統合しレベルごとに階層化せよ

 まず可用性から考えてみよう。結論から述べると、可用性を考慮したストレージを適切に組むためには、統合され、可用性のレベルごとにデータが階層化された統合ストレージであることが必要だ。

 第2回 “過剰投資”なストレージ、まずは統合からでは「情報量が増えてきたらストレージを統合すべき」と述べたが、統合ストレージには無停止が求められるデータ領域が必ず存在する。実際、ストレージ製品にはあらゆる保守作業をオンラインで行える事実上の無停止対応製品が既にある。こうした製品では計画停止さえ不要だ。

 無停止のストレージを必要とするデータがあるならば、その多少にかかわらず、必ず導入すべきだ。第3回 ストレージ統合を阻むデータ移行の壁で解説したリプレースの際のデータ移行には、このようなストレージならサービスを止めずに行える機能がある。

 一方、計画停止を許容できるサービスや、停止があっても影響が少ないサービスに関わるストレージであれば、稼働率99.999%(年間停止時間は約5分、ただし計画停止を除く)グレードの製品が妥当である。

 また、バックアップ用や検証用・開発用のストレージであれば可用性は二の次にして可能な限り安い選択で構わないかもしれない。  だが、サービス別にシステムを構築して泥縄式で専用ストレージを購入するスタイルでは、適材適所の製品選定が難しい。過剰投資になったり、リスクの高い選択になったりしてしまう。

性能向上にはSSDの利用やドライブ増設、QoS機能などを検討せよ

 2つ目の性能の観点で考えてみよう。IT装置の中で伝送が最も、しかも格段に遅いのがHDDであるのは言うまでもない。従って、高性能ストレージには大容量のキャッシュが欠かせない。リードキャッシュはそもそもHDDにアクセスしないことで、ライトキャッシュはディスクへの書き込みが間に合わないデータを預かることでIOPS(1秒当たりのI/O数)を高める。

 ただしストレージ筺体に搭載できるキャッシュ容量には限界がある。第7回 SSDの誤った使い道・正しい使い道で解説したように、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)を併用するか、SSDをキャッシュに転用できるストレージを選択することで性能の向上を図ることができる。

 それでも、キャッシュで全ての入出力を賄えるわけではないので、やはりHDDの種別と搭載数もストレージの性能に影響を及ぼす。7200rpmのSATAディスク、1万5000rpmのSAS(シリアル・アタッチドSCSI)/FC(ファイバーチャネル)ディスク、およびSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)のそれぞれのIOPSはおよそ80、180、2500であることは覚えておくとよい。