消費者が手に持つスマートフォンや携帯電話を目がけて、販促策をタイムリーに打てるシステムをつくるためには、事業部門と情報システム部門が従来以上に強力なタッグを組む必要がある。イオンリテールやプレナス(ほっともっと)、東京シャツ(BRICK HOUSE シャツ工房)、HMVジャパンなどの事例と共に、儲(もう)けるモバイル販促システム作りのノウハウを、今回(第3回)と次回(第4回)の2回に分けて紹介する。
顧客を特定する仕組みを設け、属性や購買履歴に応じて、優待内容や発信する情報の内容を変える。販促活動は効果を見ながら進め、顧客へのアプローチには電子メール以外の手段も組み合わせる。システム構築にあたっては、様々な種類のモバイル端末からサービスを使えるようにする。必要に応じて、無料サービスの活用も検討する---。
このような機能が求められるモバイル販促の仕組みは、これまで情報システム部門が手がけていたシステムとは異なる特色を持つ部分が多い。事業部門もシステム部門も知っておくべき、儲けるシステムの実現に向けた七つのステップを2回に分けて見ていく(図1)。今回はステップ1~4を紹介する。
【ステップ1】 「誰が」を履歴に加える
まずは、顧客を特定する仕組みを用意する。ここで有効なのがFeliCa(フェリカ)機能だ。これまでは携帯電話だけにしか搭載されていなかったが、2010年秋以降、Androidを搭載したスマートフォンの一部でも使えるようになった。
顧客を特定するのはマーケティングの基本だが、不特定多数の顧客を相手にする外食や小売りといった業態では難しかった。FeliCa機能を使えば、それが簡単に実現できるようになる。
イオンリテールの「イオンかざすクーポン」は、顧客の特定にFeliCa機能を利用している(図2、本記事最後の別掲記事「不可能が可能になる」を参照)。仕組みはこうだ。顧客は、同社のメールマガジンか携帯サイトによって、イオンで使える最新のクーポンを確認する。クーポンの対象商品をレジに持参し、POSレジに設置してあるリーダーライターに携帯電話をかざすと、値引きが受けられる。