写真1●NRIの村田佳生 執行役員 コンサルティング事業本部副本部長
写真1●NRIの村田佳生 執行役員 コンサルティング事業本部副本部長
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 NTTデータと野村総合研究所(NRI)が共同開催した「ITと新社会デザインフォーラム2011」。多摩大学大学院の紺野登教授が示した目指すべき都市と人材の姿を受けて、NRIの村田佳生 執行役員 コンサルティング事業本部副本部長が「価値創造を担うシステム・アーキテクト~IT人材のパラダイム・シフト~」と題して、新しい人材像を定義した(写真1)。当日、身振り手振りと直感的なスライドを多用したスタイルのプレゼンは、twitterで「ジョブズのプレゼンのようだ」と評されていた。

 「1990年代半ばから徐々にSEはイノベーションの中心から外れはじめ、今やSEは傍流に追いやられてしまった。だが、再び中心に舞い戻るだろう」と村田執行役員は言い切る。これからは必要とされるイノベーションは、社会価値を変革するイノベーションであり、そこでは「新しいIT人材像である『デザイン型人材』がギーク(SE)とスーツ(ビジネスコンサルタント)を率いてイノベーションを起こす」という。

 村田執行役員はこれから期待されるイノベーションの先行例として、iPod、Wiiのコントローラ、スターバックスの紙コップ削減キャンペーン、世界最大のモバイル・バンキング・サービス「M-PESA」、JR東日本の電子マネー「Suica」などを次々と発表。「誰もRFP(提案依頼書)を作ってくれない社会の課題を、現場から発見して手繰り寄せ、それを解決するプロトタイプをすばやく作り、ビジネスとなるようにプランニングする」という役割は、「“場”を創造して、スーツやギークをキャスティングし、みんなをやる気にさせる」。村田執行役員はそうしたデザイン人材が欠かせないと強く訴えた。

 デザイン型人材の育成が「簡単ではない」ことは村田執行役員も認める。複数の経験が必要で、例えばNGOに1カ月間に社員を派遣して社会価値を見極める目を養ったり、ソーシャルメディアを活用して1年で500人の異業種の人と出会ってキャスティング力を高めたりすることが必要という。「会社として人材モニタリングのデータベースの質を変えたり、フューチャーセンターを設けたりする改革も必要だが、デザイン型人材の育成に舵を切っていく」と村田執行役員は強く宣言した。